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Dr.Hipsが語る〜痔を知り、楽に治す方法〜

おしりの医学#048「正しい排便の方法」

肛門や直腸の病気である痔は、排便と密接な関係にあります。排便の回数が多かったり、スムーズな排便ができていないと、身体への負担が増え、結果的に痔の悪化につながる可能性が高いです。今回は正しい排便の方法や快便につながる行動についてお話ししていきます。

排便で重要なのは「したい時にトイレに行く」こと

痔の症状を抱えている人ならば、可能な限り肛門へ負担をかけないような排便の方法を知りたいと考えるでしょう。実は排便時に肛門に負担をかけない秘訣は、排便したくなったタイミングでトイレに行くことです。 基本的に、健康な人であれば朝起きてすぐに便意を催す傾向にあります。よって、生活習慣の改善によって痔を治したいと考える人の中には、何がなんでも朝の決まった時間に排便をしようとしている人も少なくありません。
しかし、時間を決めず便意があるタイミングに我慢せずにトイレに行くことが重要です。基本的に、人間が便座に座ると150程度の圧力がかかります。なので、便意がある状態であれば、便座に座っただけで便がスムーズに出てくるはずです。
また、便意がない状態でトイレに座り、排便時にいきむと血圧が一時的に200を超えてしまいます。血圧が200を超える状態では脳血管が切れてしまう恐れがあり危険です。排便時の身体の負担を抑えるためには、いきまずに便を出すことを習慣づける必要があります。
便意があって便がスムーズに出る状態になっていれば、排便には3分もかかりません。トイレに座っても3分以上便が出ないようであれば、一度諦めて便が降りてくるのを待つようにしましょう。トイレにスマホや本を持ち込むのは、便座に座る時間が長くなってしまうので厳禁です。

便意がある時は我慢しない

逆に便意があるのに排便を我慢するのは良くありません。排便を我慢してしまうと便意が分かりづらくなってしまい、排便すべきタイミングがつかめなくなってしまいます。
特に社会人の方などは日常生活の中でトイレに行きづらいタイミングも多いでしょう。しかし、痔の悪化や身体への負担を抑えるためには、可能な限り自身の便意に従って排便をすることが重要です。

スムーズに便が出るイメージを持つことが重要

便意があるタイミングでトイレに行き、スムーズに排便できたのであれば、翌日以降は当時の状況をイメージするようにしましょう。人間の身体は成功体験をイメージしていると上手く動いてくれます。 排便でも例外ではなく、排便が上手くいった時の状況を上手くイメージ出来れば、翌日以降の排便がスムーズに行える可能性が高いです。野球でスラッガーがホームランのイメージを持ち続けるように、排便が上手く行った時のイメージを持っておくようにしましょう。

便意を引き起こすために行うべき習慣

身体や痔に負担の少ない排便をするためには便意がある時にトイレに行くことが重要であることが分かりました。しかし、「便意がある時に行けと言われても日によってタイミングは違うし難しい」と考える人も多いでしょう。 実は便意はとある行動を習慣づけることによって決まった時間に引き起こせるようになります。重要になるのは便意の発生に関連する2つの反射です。基本的に、便意は「起立反射」と「胃結腸反射」という2つの反射によって引き起こされます。
よって、日常で人為的に起立反射と胃結腸反射が引き起こせるようになれば、排便のタイミングをコントロールすることが可能です。

起立反射はマッサージや運動で増強できる

起立反射は身体を起こしたときに起こる反射です。通常、朝にベットから身体を起こした時に自律神経が反応して起こる反射ですが、マッサージや運動をすることで反射を増強できます。具体的にはウォーキングやストレッチなど、軽い運動で問題ありません。 朝しっかりと排便したいのであれば、起き抜けにストレッチや体操などを行い、自律神経を刺激してみましょう。

胃結腸反射は起き抜けに水を飲むと増強可能

胃結腸反射は胃に食べ物や飲み物が入った時に起こる反応になります。食後に便意を催すことが多いのは、胃結腸反射が起こっているためです。つまり、便意を発生させたい時に合わせて食べ物や飲み物を摂取すれば、排便のタイミングをある程度コントロールすることができます。 特に朝は起立反射との相乗効果が期待できるため、胃結腸反射を上手く起こすことによって快適な排便が可能です。朝に胃結腸反射を起こすためには、起き抜けにコップ1杯の水を飲みましょう。胃に水が入ることで自律神経が刺激され、便意を起こすことが可能です。

快便につながる行動を習慣づけて痔や身体への負担を減らそう

痔や身体への負担が少ない排便を実現するためには、排便のタイミングが重要になります。便意がない状態でトイレに行くと排便時にいきむことになり、身体への負担が大きいです。便をスムーズに出したいのであれば、便意がある時に我慢せずトイレに行き、自然に便が落ちてくるのを待つようにしましょう。しっかりと便意があるのであれば3分以内には便が出てくるはずです。 また、スムーズな排便を実現するためには快便につながる行動を習慣づけることも重要です。起きてすぐのストレッチやウォーキング、起き抜けに水を飲むといった行動は自律神経を刺激し、便意を引き起こしてくれます。便意のきっかけとなる行動を習慣化することで、体への負担が少ない排便を心がけましょう。

平田雅彦プロフィール(平田肛門科医院 院長)
1953年 東京都生まれ。
筑波大学医学専門学群卒業。慶應義塾大学医学部外科学教室に入局し、一般外科を研修。
社会保険中央総合病院大腸肛門病センターに入り、大腸肛門病の専門医としての豊富な臨床経験を積む。
現在、平田肛門科医院の3代目院長。