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おしりの医学#086「辛い食べ物はおしり(痔)によくないですか?」

前回に引き続き、ライブ配信でいただいた質問についてお話しします。「激辛料理が好きで、普通の料理にも唐辛子や山椒を沢山かけてしまいます。やはり辛い食べ物はおしりには良くないのでしょうか?」という質問をいただきました。そこで今回は、辛い食べ物がお尻に及ぼす影響や、日本人が刺激の強い食べ物に弱い理由をお話しします。

各国の食材の傾向と身体への影響

辛い食べ物が痔に与える影響についてお話しする前に、各国の食材の傾向と身体への影響についてお話します。日本人は元々、唐辛子やニンニクを食べる文化がありませんでした。日本人は肉を食べる習慣がなかったため、防腐剤としての役割を持つ唐辛子やニンニクが必要なかったのです。しかし、平安時代に平安京を建立する際、工事に従事した大工の4割ほどが朝鮮人だったこともあって、唐辛子やニンニクが朝鮮料理と共に日本に入ってきました。
また、同時期にはインドからナスが伝来しています。
日本の料理の歴史を辿ると、ナスは日本料理に利用される食材として残りましたが、明治時代まで肉を食べる文化が根付かなかったこともあって、唐辛子やニンニクは長い間使われることがありませんでした。食材は各国の風土に対応するために利用されます。
例えば、タイ料理でパクチーを使うことが多いのは、パクチーを摂取することがマラリアの予防になると考えられているためです。また、日本でワサビを使用するのは魚に寄生しているアニサキスに対策できると考えられていたことが由来となります。以上のように、各国の食材は風土に合わせて食べられており、人々の胃腸も食べられる食材に合わせてそれぞれ個性をもっています。

日本人の胃腸は香辛料への耐性が低い

上記のような事情もあり、実は日本人の胃腸は刺激の強い食材への耐性が少ないです。事実、日本人の唐辛子の体内吸収率は約3%といわれています。つまり、約97%は体内に吸収されず、便として排出されるということです。
結果、肛門に刺激が与えられ、炎症を引き起こす要因になります。また、刺激の強い食材が原因で下痢などの症状がでると、肛門に負担がかかるため痔の発症に繋がる可能性があります。
よって、痔になるリスクを考えるのであれば刺激物は控えた方が良いでしょう。もし摂取するとしても過剰な量を一気に摂取するのではなく、適切な量を摂ることをおすすめします。

平田雅彦プロフィール(平田肛門科医院 院長)
1953年 東京都生まれ。
筑波大学医学専門学群卒業。慶應義塾大学医学部外科学教室に入局し、一般外科を研修。
社会保険中央総合病院大腸肛門病センターに入り、大腸肛門病の専門医としての豊富な臨床経験を積む。
現在、平田肛門科医院の3代目院長。

平田悠悟プロフィール(平田肛門科医院 副院長)

1982年 東京都生まれ。
筑波大学医学専門学群卒業。東京大学大腸肛門外科入局後、東京山手メディカルセンター大腸肛門病センターに出向し、
大腸肛門病の専門医としての豊富な臨床経験を積む。
2020年 東京大学大学院医学系研究科外科学専攻医学博士課程修了。
現在は平田肛門科医院の副院長。