Dr.Hipsが語る〜痔を知り、楽に治す方法〜
おしりの医学#012「妊娠中の痔」
妊娠前からできていた痔に妊娠後気がつくことも
今回は、妊娠中に痔になった場合の対処法についてご説明します。
まず前提として、妊娠中の痔が全て妊娠によるものとは限りません。例えば、痔核(いぼ痔)の一種である内痔核は、妊娠が原因ではない可能性が高いです。内痔核は血管の塊で、1〜2年単位でできるものです。妊娠前に小さい内痔核ができていて、妊娠によりその内痔核が大きく腫れたことで痛みを感じるケースが多いようです。
妊娠中に痔になりやすい理由
しかし、妊娠中は痔になりやすいというのも事実です。
これは、妊娠による性ホルモンバランスの変化により、肛門に炎症が起きやすくなるためです。
また、子宮が大きくなってくると、下大静脈という子宮の後にある静脈が圧迫されることで肛門がうっ血し、これにより肛門付近の血液が心臓に戻りにくくなり、肛門が炎症を起こすこともあります。
さらに、妊娠による便秘も痔の原因の1つとなります。
妊娠中に痔になってしまったら産婦人科か肛門科へ
理想を言えば、妊娠を望む方は妊娠前に痔の検診を受けておくべきですが、なかなかそういうわけにはいかないと思います。せめて、妊娠中に痔の症状が出たら、なるべく早く担当の産婦人科医に相談してください。おそらく肛門科に行くことを勧められるでしょうから、直接当院のような肛門科に来られても大丈夫です。
ただし、妊娠中、特に妊娠初期は使える薬が限られるため、その点は注意しましょう。痔の際処方される薬の中には、ステイロイドホルモンや抗生物質など、成分の強いものもあります。当院で妊娠中の患者さんに薬を処方する際には、必ず担当の産婦人科医に許可をもらってから服用してもらいます。なお、妊娠中期になれば使える薬が増えるので、処方する薬の種類も異なってきます。
薬の処方だけでなく生活習慣の指導ができる医師を
また、妊娠中の痔には、お通じを整えることも重要です。妊娠中の患者さんは特に、下剤などの薬の服用ではなく、食生活の改善による便秘解消を目指した方がいいでしょう。下剤は流産の原因になることもあるため、当院では、産婦人科医に処方してもらうようお願いしています。
このように、妊娠中の痔の治療では気をつけるべき点も多いので、なるべくしっかり話を聞いてくれて、薬の処方だけでなく生活習慣の指導もしてくれる医師を選ぶようにしましょう。
平田雅彦プロフィール(平田肛門科医院 院長)
1953年 東京都生まれ。
筑波大学医学専門学群卒業。慶應義塾大学医学部外科学教室に入局し、一般外科を研修。
社会保険中央総合病院大腸肛門病センターに入り、大腸肛門病の専門医としての豊富な臨床経験を積む。
現在、平田肛門科医院の3代目院長。