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おしりの医学#044「 痔の手術の失敗例(1)痔瘻」

痔瘻の手術を受ければ大抵の場合問題なく回復しますが、中には手術が失敗して完治しなかったり、再発に繋がることもあります。痔瘻の手術の失敗には共通の原因があることが多いです。今回は痔瘻の手術の失敗例と原因について実例も交えてお話ししていきます。

痔瘻の手術後は安静にすべきか?

前提として、痔瘻は再発の可能性が高い病気です。肛門は便が通過する都合上、手術後に安静にしていても負担がかかりやすい部分なので、再発して再度治療を受ける人は少なくありません。とはいえ、肛門を傷つけない手術方法を選択し、丁寧に手術を行えば再発のリスクを抑えられます。
痔瘻の手術が失敗するのは、手術方法を設計する時点で問題がある可能性が高いです。『おしりの医学#036『痔瘻(痔ろう)の種類について」』でも解説していますが、痔瘻は肛門の中にある歯状線という部分にある「肛門陰窩(こうもんいんか)」、別名「原発口」という部分から便や雑菌が入り、化膿することで発症します。
痔瘻の手術をする際には原発口と痔瘻の終点である「二次口」の位置をしっかり把握した上で手術を行うことが重要です。もし、原発口と二次口の位置が把握できていない状態で手術を行ってしまうと、病巣が取り切れず、再発の可能性が高くなってしまいます。

術後に重労働をする可能性がある場合は注意が必要

当院には手術の失敗や再発で来院される患者さんも多く存在します。中でも珍しい例だったのが、自身が勤めている大学病院で手術を受けた医師の方が来院された際のことです。話を聞くと、自身が勤めている大学病院で3回痔瘻の手術をしたものの再発してしまい、当院に来院したということでした。
原因を調べてみると、やはり原発口と二次口、さらに病巣の位置を把握できておらず、患部と別の部分を手術していたのです。さらに、肛門括約筋を保護する方法ではなく、患部を切開する方法で手術が行われていたため、肛門の機能が弱くなっている状態でした。
他にも20代で痔瘻の手術をしたものの、術部から便が漏れるようになってしまい、40代まで苦しんでいる方もいました。共に当院で肛門括約筋を保護する方法で手術を行い、無事に治療が完了しましたが、上記のように痔瘻の手術後も再発などで苦労する可能性があるため注意が必要です。

痔瘻の手術後はあくまで無理せず行動しよう

痔瘻の手術は失敗や再発することも少なくありません。手術が失敗する原因としては、原発口、原発巣、二次口の場所を把握しきれておらず、手術の設計が上手くできていないことが多いです。
特に肛門を切開して肛門括約筋ごと除去するような手術方法の場合、元に戻すことはできません。よって、手術を受ける際には肛門括約筋を保護するような方法を選ぶことをおすすめします。
また、手術を受ける際には複数の医師に相談するのも有効な方法です。医師の話や手術方法などを慎重に聞き、信頼できる医師の元で手術を受けるようにしましょう。

平田雅彦プロフィール(平田肛門科医院 院長)
1953年 東京都生まれ。
筑波大学医学専門学群卒業。慶應義塾大学医学部外科学教室に入局し、一般外科を研修。
社会保険中央総合病院大腸肛門病センターに入り、大腸肛門病の専門医としての豊富な臨床経験を積む。
現在、平田肛門科医院の3代目院長。