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Dr.Hipsが語る〜痔を知り、楽に治す方法〜

おしりの医学#050「痔にやさしい食事とは?」

痔の症状がある時は食事にも気をつける必要があります。基本的は『おしりの医学#007「痔に良い食べ物・悪い食べ物」』でお話ししたように、食物繊維と水分をしっかりと摂ることが重要です。加えて、日本人が健康的な生活を送る上で摂るべき食事について持論があるので、お話ししていきます。

痔の治療に使う外用薬の種類は座薬がおすすめ

痔に限らず、日本人が健康を維持する上で最も効果的な食事は和食であると考えています。日本人は1500年近く前から、日本の国土や気候に合わせて作った食材を使用しており、日本人の身体の構造も和食に合わせたものになっているためです。 古来、日本に持ち込まれた食材の中には、和食に使用されることが少ないものもあります。要は昔の日本人の健康維持において、必要性が少ないと考えられたということです。例えば、唐辛子のニンニクは平安時代、平安京を建造した朝鮮の大工が持ち込んだと言われています。
朝鮮の大工が唐辛子とニンニクを持ち込んだ理由は、獣肉を食べる文化のなかった日本において、肉を長期保存するためでした。唐辛子には防腐作用があるため、肉の保存期間を伸ばすことができます。
また、ニンニクは天然の抗生物質と呼べるほど殺菌作用が強いため、鮮度の悪くなった肉を安全に食べるために必要でした。ところが、唐辛子とニンニクは和食ではほとんど使用されません。せいぜい唐辛子が蕎麦などの薬味に使われるくらいです。つまり、唐辛子やニンニクは当時の日本人が健康維持する上で必要ないと考えられていたという仮説を立てられます。
対して、同じ時代に日本に伝来してきて和食に使われるようになったのが、インドから持ち込まれたナスです。ナスは当時の日本の食文化に上手く溶け込み、和食の食材として親しまれています。
以上のように、古来に伝来した食材すべてが和食に取り入れられたわけではありません。唐辛子やニンニクなどのように和食に取り入れられなかった食べ物は、現代も日本人の身体に合っているとは言えず、排便に悪影響を及ぼして痔の悪化を招く要因となります。
痔に限らず身体の健康を考えるのであれば、昔から食べられていた食材を摂取するのが最適であると私は考えています。

1日3食白米を食べることが重要

痔の悪化を招く要因の1つが便秘です。便秘になると排便時に肛門に負担がかかるだけでなく、いきむことで血圧が一時的に上昇し、脳の血管が切れるなどの悪影響があります。実は、便秘を解消したいときに有効な食事も和食であるという結果が出ているのです。 とある大学の研究によれば、便秘を解消するためには、1日3食しっかりと白米を食べることが有効であるという結論が出ました。白米には適度な食物繊維と水分が含まれています。白米を1日の中で定期的摂取すれば、食物繊維と水分が作用して便が軟らかくなり、便秘の解消につながります。
白米と共に発酵食品を摂るのも有効な手段です。特に納豆は白米とも相性が良く、摂取することで便秘の解消と腸内環境の改善を同時に行えます。

各地域の食材の傾向には風土にあった理由がある

飽食の時代と呼ばれる現代。多様化した食事は、ファッションと同じように扱われるようにもなってきました。しかし、ファッション的に食事を選ぶのは健康維持において問題がある場合があります。例えば、元来あまり唐辛子を食べてこなかった日本人が、激辛料理ばかり食べていると、身体に負担がかかってしまうので注意が必要です。 各地域の食材の傾向には風土にあった理由があります。寿司にワサビを入れるのは生魚に寄生しているアニサキスを死滅させるためです。タイ料理にパクチーが使われるのも、単なるスパイスとして食味にアクセントを加えるだけでありません。パクチーの成分が汗として身体の表面に出てくることで虫よけの効果があり、マラリアを媒介している蚊を寄せ付けない目的があります。
以上のように、各地域特有の食材が使われたのには風土ごとの事情があったわけです。よって、個人的には日本人は健康維持という点で唐辛子やパクチーを食べる必要がないと考えています。痔に限らず、日本人が健康な身体を維持したいのであれば、ぜひ和食を食べましょう。痔に優しい具体的な食べ物については『おしりの医学#007「痔に良い食べ物・悪い食べ物」』でも解説しているので、合わせてご覧ください。

平田雅彦プロフィール(平田肛門科医院 院長)
1953年 東京都生まれ。
筑波大学医学専門学群卒業。慶應義塾大学医学部外科学教室に入局し、一般外科を研修。
社会保険中央総合病院大腸肛門病センターに入り、大腸肛門病の専門医としての豊富な臨床経験を積む。
現在、平田肛門科医院の3代目院長。