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おしりの医学#051「手術をする前のチェックポイント①〜内痔核(いぼ痔)」

痔の治療において手術は最終手段です。多くの痔の症状は保存療法で改善できます。しかし、特定の症状があったり、症状がある程度進行している場合は手術が必要です。今回は痔の中でも症例が多い内核痔で手術が必要になる基準についてお話しします。

内核痔とは歯状線よりも内側にできた痔核のこと

内痔核は痔核(いぼ痔)の1種で、肛門の皮膚と粘膜の境目である歯状線よりも内側にできたもののことを指します。つまり、肛門付近の粘膜部分にできた痔核のことです。便秘や下痢などで肛門付近に慢性的に負担がかかると、血液の循環が悪くなってしまい、血管と結合組織が盛り上がってきます。 切れ痔や外痔核とは異なり、内痔核ができても痛みを感じることはありません。しかし、排便時に出血がある他、脱肛して内痔核が外に出てくると痛みを感じます。詳しくは「内痔核の症状」という記事をご覧ください。

内核痔は生活習慣の改善と薬の治療が基本

実は内痔核で手術が必要になるケースは少ないです。基本的には生活習慣の改善と薬による治療を行うことで、徐々に腫れが引いて内痔核が小さくなっていきます。 痔の症状がある患者さんの中には「すぐに手術をしてほしい」という方も少なくないです。しかし、まずは3ヶ月ほど生活指導をしつつ様子を見て、本当に手術が必要なのか見極めることが重要です。
具体的な生活指導としては、朝の排便を促すために習慣にすべき行動の指導や食事に関する指導を行います。起き抜けに1杯の水を飲み、軽くストレッチを行うことで快適な排便を行うことが可能です。また、1日3食、和食のような食物繊維の多い食事を摂ることも痔の改善につながります。
詳しくは「新刊連動企画『マンガでわかる痔の治し方』 LESSON3」でお話ししているのでぜひご覧ください。また、痔の外用薬の選び方については『おしりの医学#046「痔の治療薬はどれが良いの?」』で解説しています。

内核痔における手術の必要性を測るチェックポイント

生活指導と薬による治療を行いつつ3ヶ月ほど様子を見たら、手術が必要かどうかの判断を行います。内核痔における手術が必要な人の基準は、脱肛(内核時が外に出てくる現象)が頻繁に起こるかどうかです。
以下のような状態になっている方は、内核痔の症状がステージ3からステージ4にまで進行しています。

  • 排便時に毎回内核痔が外に出てしまう方
  • 歩行時するだけで出てしまう方
  • 常に脱肛した状態になっている方

重症化している内核痔で生活指導や薬による治療が見込めない場合、手術が必要になる可能性が高いです。とはいえ、上記のような状態になるまで症状が進行している方はほとんどいません。事実、当院における内核痔の手術率は12%ほどであり、多くの患者さんは手術を行うことなく治療に成功しています。

内核痔の場合は手術以外の治療で様子を見よう

内核痔は生活習慣の改善と薬で治療できる可能性が高い病気です。よって、痔の手術は身体への負担も大きいため、すぐに手術を行うのはおすすめしません。まずは3ヶ月ほど薬を使いながら生活習慣を改善を目指し、様子を見ましょう。
ただし、症状が進行し、内核痔の脱肛が頻繁に起こっている場合は手術が必要なこともあります。内核痔の治療を行う際は自身で判断せず、肛門科の診察を受けたうえで最適な治療を行うようにしましょう。

平田雅彦プロフィール(平田肛門科医院 院長)
1953年 東京都生まれ。
筑波大学医学専門学群卒業。慶應義塾大学医学部外科学教室に入局し、一般外科を研修。
社会保険中央総合病院大腸肛門病センターに入り、大腸肛門病の専門医としての豊富な臨床経験を積む。
現在、平田肛門科医院の3代目院長。