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Dr.Hipsが語る〜痔を知り、楽に治す方法〜

おしりの医学#070「入院手術が必要な痔と通院で良くなる痔」

一口に痔と言っても、その症状は様々であり、治療方法もそれぞれ異なります。そのため、痔の治療を行う際には症状の見極めが重要になります。今回は痔の症状ごとに手術が必要かどうかを解説した上で、症状による見極め方を紹介していきます。

内痔核における治療方法の見極め方

まずは当サイトでも何度も取り上げている内痔核について見ていきましょう。内痔核は通称いぼ痔とも呼ばれるもので、肛門の皮膚の粘膜の境界線である歯状線よりも内側(粘膜側)に発生する痔核のことです。排便時に出血したり、肛門から脱出するのが特徴で、炎症が起こっていると痛みが生じることもあります。内痔核の治療方法を見極めるためには、まず内痔核の炎症を抑えなければいけません。これは世界共通で、炎症がなくなった後に痔核の大きさを確認し、治療方針を決めていきます。
炎症の治療は基本的に生活習慣の改善によって行います。炎症がおさまった段階で、内痔核の大きさがそこまで大きくないのであれば、そのまま痔核が小さくなるまで生活指導と薬による治療を行います。ただし、炎症がおさまっても内痔核が大きく、生活指導と薬では治療が難しいと判断した場合は、手術による治療を行うことが多いです。
世界における内痔核の手術率を見てみると、ドイツで7%、イギリスでは8~9%、アメリカでは4%とかなり少なくなっています。つまり、内痔核で手術が必要になるケースは少ないということです。基本的には生活習慣の改善と薬によって治療できるので、恐れずに医師の診察を受けることが治療の近道になります。

裂肛における治療方法の見極め方

裂肛はいわゆる切れ痔と呼ばれるもので、肛門付近の皮膚や粘膜に裂けたような傷ができる症状となります。便秘などで強くいきみ、硬い便を無理やり出そうとすると発症することが多いです。裂肛の場合は手術が必要になることはほとんどありません。内痔核と同様、生活習慣の改善と薬による治療を行えば2ヶ月程度で完治します。
ただし、裂肛が悪化して肛門狭窄になってしまった場合は手術が必要になる場合があります。肛門狭窄は裂肛の頻発によって肛門が狭くなってしまう症状です。生活指導によっても治療できる場合はありますが、当院でも20%弱の患者様は手術を行っています。

痔瘻における治療方法の見極め方

痔瘻とは直腸から肛門周囲の皮膚に亘って穴が開いてしまう病気のことです。歯状線に存在する肛門陰窩(こうもんいんか)という小さなくぼみに便が入り込み、細菌によって化膿してしまうと発症します。詳しくは『おしりの医学#036「痔瘻(痔ろう)の種類について」』をご覧ください。
痔瘻は他の痔の症状とは違い、基本的に手術が必要になります。悪化するとがんに発展する可能性があるため、可能な限り早期に治療を行わなければいけません。重要なのは本当に痔瘻なのかという点です。痔瘻になると歯状線から肛門付近の皮膚にかけて穴があくので、簡単に見分けられると思われがちですが、症状の進行度によっては穴が貫通しておらず、一見して他の痔と見分けられないこともあります。
痔瘻の手術は身体への負担が大きく、後遺症が残る可能性もあるため、見極めを誤ると身体に必要以上の負担をかけてしまうことになります。よって、明らかに痔瘻であると判断できない場合は経過を観察し、痔瘻であると明確に判断できるようになってから手術を行うことが重要です。

平田雅彦プロフィール(平田肛門科医院 院長)
1953年 東京都生まれ。
筑波大学医学専門学群卒業。慶應義塾大学医学部外科学教室に入局し、一般外科を研修。
社会保険中央総合病院大腸肛門病センターに入り、大腸肛門病の専門医としての豊富な臨床経験を積む。
現在、平田肛門科医院の3代目院長。