Dr.Hipsが語る〜痔を知り、楽に治す方法〜
おしりの医学#073「瘢痕(はんこん)化した肛門(痔)は治らないの?」
裂肛(切れ痔)が何度もできると、傷口が瘢痕化し、肛門が狭くなってしまいます。瘢痕化した傷口はなかなか治らないので、一生改善しないのかと不安になる方も多いでしょう。今回は瘢痕化した痔が治るのかについて、専門医の意見を述べていきます。
瘢痕化した痔とは?
瘢痕とは傷跡のことです。裂肛が何度もできると、だんだんと傷口の治りが悪くなり、瘢痕化してしまいます。また、手術などによってできた傷跡が瘢痕化することも少なくありません。痔が瘢痕化すると、瘢痕の周りの皮膚が硬くなり、肛門が狭くなってしまうのです。瘢痕化によって肛門が狭くなってしまう症状が肛門狭窄です。
肛門狭窄になると便の通り道が狭くなるので便が出にくくなり、力むと鉛筆の太さほどの便がようやく出てくるような状態になります。結果的に便秘の原因になる他、裂肛の頻発やいきむ機会が増えることによる炎上の悪化など、様々な症状を引き起こすことになるのです。
瘢痕化した痔は治るのか
瘢痕化した痔が治るかどうかは、瘢痕の深さによって変わります。裂肛が繰り返し起こったことによってできた瘢痕は傷が浅いため、治療によって改善することが可能です。問題は手術でできた瘢痕です。
手術によって肛門を深く切ってしまうと、裂肛とは比べ物にならない深い瘢痕ができてしまいます。傷口が深い瘢痕は伸びづらく、改善が困難です。とはいえ、人間の皮膚や粘膜は2ヶ月程度の周期で生え変わります。瘢痕も同様で、2ヶ月周期で皮膚が生え変わり、徐々に軟らかくなっていきます。よって、長期間かかりますが、傷口の深い瘢痕でも改善することが可能です。
傷口の深い瘢痕が改善したケース
当院に来院された患者様の中で、深い瘢痕が改善したケースを紹介します。患者様は20代の女性で、痔の手術によって肛門に深い瘢痕ができてしまいました。瘢痕の範囲は広く、肛門も割り箸の半分程度まで狭くなっていました。
皮膚移植をしても完治は難しいということで、保存療法で治療していくことにしました。2ヶ月に一回の通院をして生活指導と薬による治療を行った結果、3年で親指程度まで肛門が広がるようになり、生活に支障が出なくなりました。
当院では肛門狭窄尾手術率は18.5%。つまり82%の方は手術せずに治療が成功しています。希望があれば手術を行いますが、肛門を傷つけないためにも、時間がかかっても可能な限り保存療法で治療していくのがおすすめです。
平田雅彦プロフィール(平田肛門科医院 院長)
1953年 東京都生まれ。
筑波大学医学専門学群卒業。慶應義塾大学医学部外科学教室に入局し、一般外科を研修。
社会保険中央総合病院大腸肛門病センターに入り、大腸肛門病の専門医としての豊富な臨床経験を積む。
現在、平田肛門科医院の3代目院長。