Dr.Hipsが語る〜痔を知り、楽に治す方法〜
おしりの医学#082「今知って欲しい腸活の常識(痔の改善)」
乳酸菌の効果が世間的に知られるようになって以降、腸活をする人が増えています。腸内環境を整えることは便秘の予防や改善にも有効ですが、効果的に行えていない人も少なくありません。今回は腸活をする上で重要な知識について解説していきます。
腸活では「菌の多様性」が重要
腸活で重要になるのは菌の多様性です。巷にはヤクルトやピルクルなど、多種多様な乳酸菌飲料やサプリメントが販売されています。しかし、普段から意識的に乳酸菌を摂取しているという人でも、複数の商品は利用していないという人が多いです。
効果的な腸活を行いたいのであれば、乳酸菌を複数摂取し、腸内に菌の多様性を持たせなければいけません。例えば、ビフィズス菌には60種類の菌種が存在します。1種類の菌を摂取し続けることでも効果はありますが、60種類の菌がまんべんなく繁栄している方が、大腸菌をはじめとした悪玉菌から腸を守る効果が高くなると言われています。
よって、より良い腸活がしたいのであれば、複数の乳酸菌飲料やサプリメントを利用し、腸内に菌の多様性を持たせることが重要です。
食物繊維やオリゴ糖も多様性が重要
効果的な腸活には菌の多様性だけでなく、菌の餌となる食物繊維やオリゴ糖の多様性も重要です。実は食物繊維やオリゴ糖も菌と同様に様々な種類があります。乳酸菌をはじめとした善玉菌が食物繊維やオリゴ糖を餌とすることは良く知られていますが、菌ごとに反応する餌が異なることはあまり知られていません。
例えば、普段ビフィズス菌と食物繊維を意識的に摂取していたとしても、それぞれに親和性がないとビフィズス菌が増えず、腸活の効果が出づらくなってしまいます。効果的な腸活をしたいのであれば、食物繊維やオリゴ糖も多種多様なものを摂取するよう意識しましょう。
効果的な腸活に必要な食物繊維とオリゴ糖の種類
効果的な腸活に必要な食物繊維は以下の通りです。
- 多孔質の不溶性食物繊維:とうもろこし、大麦、ごぼう、もやしなど
- 繊維質の不溶性食物繊維:葉物野菜、芋類など
- 粘度の低い水溶性食物繊維:キウイ、バナナ、わかめなど
- 粘度の高い水溶性食物繊維:オクラ、納豆など
まず、食物繊維には不溶性食物繊維と水溶性食物繊維に分類されます。基本的に不溶性食物繊維は腸の運動を活発にする効果があり、水溶性食物繊維には腸内環境を整える効果があります。不溶性食物繊維は基本的に繊維質のものが多いです。しかし、中には多孔質のものがあり、繊維質のものよりも物質の吸着性に優れています。
水溶性食物繊維は腸内環境を整える作用がある他、血糖値の上昇を穏やかにする効果があります。水溶性食物繊維には粘度の高いものと低いものが存在し、それぞれ構成する成分が異なるのが特徴です。
続いて、オリゴ糖には以下のような種類があります。
- フラクトオリゴ糖:バナナ、たまねぎ、ニンニク、ごぼうなどに含まれる
- 大豆オリゴ糖:豆類に含まれる
- ラフィノース:てん菜に含まれる
- ガラクトオリゴ糖:牛乳に含まれる
- ラクチュロース:牛乳に含まれる
- イソマルトオリゴ糖:はちみつ、味噌、醤油などに含まれる
- キチンオリゴ糖:甲殻類の殻に含まれる
- キシロオリゴ:食物繊維から生成される
一口にオリゴ糖といっても、上記のような多種多様な種類があるので、意識的に摂取する必要があります。それぞれ食品に含まれているため、偏った食事をせず、様々な食品をまんべんなく摂取することが重要です。
平田悠悟プロフィール(平田肛門科医院 副院長)
1982年 東京都生まれ。
筑波大学医学専門学群卒業。東京大学大腸肛門外科入局後、東京山手メディカルセンター大腸肛門病センターに出向し、
大腸肛門病の専門医としての豊富な臨床経験を積む。
2020年 東京大学大学院医学系研究科外科学専攻医学博士課程修了。
現在は平田肛門科医院の副院長。