おしりの医学

HOME | 痔の治療に関するコラム | おしりの医学 | おしりの医学#103「痔の初期症状を放置すると重篤な病気になりますか?」

Dr.Hipsが語る〜痔を知り、楽に治す方法〜

おしりの医学#103「痔の初期症状を放置すると重篤な病気になりますか?」

今回はライブ配信第3回にいただいた質問についてお話しします。「痔の初期症状を放っておいた場合、がんなどの重篤な病気に繋がる可能性はありますか?」という質問をいただきました。そこで今回は、痔の初期症状と他の病気との繋がりについて解説します。

痔の初期症状とは

痔の初期症状は痔の種類によって異なります。痔を的確に治療するためには、それぞれの症状を正確に把握し、痔の種類を特定することが重要です。

いぼ痔(内痔核)の場合

いぼ痔の症状は以下の通りです。

  • 排便時に血が落ちる
  • 排便時に痔核が脱出する
  • 肛門に痛みがある

いぼ痔の場合は排便時以外にも肛門に痛みを感じることがあるのが特徴です。症状が悪化すると痔核が炎症で大きくなり、脱出した痔核が戻れなくなる他、痛みが強くなります。

切れ時(裂肛)の場合

切れ時の場合は以下のような症状が見られます。

  • 排便時に激しい痛みがある
  • お尻を拭いた時に血がペーパーに血が付く
  • 排便後も痛みが残る

切れ痔の場合は排便時や排便直後に出血や痛みが見られます。重症化すると傷口が硬くなり、慢性裂肛や肛門狭窄といった症状につながるので注意が必要です。

痔瘻の場合

痔瘻の場合は初期症状が見られないことが多いです。病状が進行すると炎症によって化膿し、最終的には直腸から肛門や付近の筋肉にわたって穴が開きます。初期症状が分かりづらいことから専門医でも見極めが難しく、明確に痔瘻と判断できるまでは経過観察することが多いです。

痔からがんになることはあるの?

基本的に、いぼ痔や切れ痔の場合は、痔からがんに繋がる可能性は低いです。ただし、痔瘻の場合は炎症からがんに発展する可能性もあります。重要なのは、自身が感じている症状の原因が本当に痔なのかです。
排便時の出血や炎症による皮膚のただれ、肛門の痛みといった症状は、肛門がんやベーチェット病など、他の病気でも見られます。つまり、痔からがんをはじめとした別の病気に繋がるのではなく、最初からその病気である可能性があるということです。
よって、前述したような症状がある場合は痔と決めつけず、専門医の診断を受けて病名を特定することが重要になります。重篤な症状になる前に、まずは専門医の診察を受け、病名の診断を受けるのがおすすめです。

腸内細菌叢とがん

腸内細菌叢の悪化は下痢や便秘の原因になる他、炎症の原因になるため、痔の発症や悪化に繋がります。同じように、腸内細菌叢の悪化が原因で腸内が炎症を起こすことで、大腸がんに繋がる恐れがあることに注意しなければいけません。
大腸がんの場合は血便や便の異常など、一見すると痔に似ているため、痔と勘違いして診察を受けない人も多いです。がんは症状が悪化すると治療が難しくなり、最悪の場合は死に至ります。取り返しのつかない状況になる前に、症状が見られたらすぐに医師の診察を受けましょう。
腸内細菌叢の改善については、『おしりの医学#082「今知って欲しい腸活の常識(痔の改善)」』や『おしりの医学#098「『腸内環境が悪くなる要因は?』~腸内細菌叢クイズ①~」』で詳しく解説しているので、併せてご覧ください。

平田悠悟プロフィール(平田肛門科医院 副院長)
1982年 東京都生まれ。
筑波大学医学専門学群卒業。東京大学大腸肛門外科入局後、東京山手メディカルセンター大腸肛門病センターに出向し、
大腸肛門病の専門医としての豊富な臨床経験を積む。
2020年 東京大学大学院医学系研究科外科学専攻医学博士課程修了。
現在は平田肛門科医院の副院長。