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おしりの医学#127「日本人が危ない!大腸がんの死亡率がなぜ高いの?」

日本における大腸がんの現状や、予防方法について詳細に解説します。

大腸がんによる死亡者数の現状

日本における大腸がんによる死亡者数は年々増加しています。2019年のデータによると、日本では約5万人が大腸がんで亡くなっています。この数字はアメリカとほぼ同じですが、アメリカの人口は日本の約2.5倍であるため、人口比で見ると日本人の方が大腸がんで命を落とす人が多いという現状があります。

なぜ日本で大腸がんによる死亡者数が高いのか?

大腸がんの死亡率が高い原因の一つとして、大腸内視鏡検査の普及率の違いが挙げられます。アメリカでは大腸内視鏡検査でポリープを発見し、早期に取り除くことがスタンダードとして行われているのに対し、日本では検査を受ける人の割合が低く、約6割にとどまっています。特に地方ではその受診率がさらに低く、検診の機会を逃している人が多いのが現状です。 大腸がんはしばしばポリープという前癌病変から発展します。過去には、ポリープとは無関係にがんが発生することもあると言われていましたが、最近の研究ではポリープからがんが発生する割合が圧倒的に高いことが分かっています。そのため、ポリープを早期に発見して取り除くことで、大腸がんの予防に大きな効果があることが確認されています。

大腸内視鏡の効果とその重要性

大腸内視鏡検査によってポリープを発見し、その場で除去することが、大腸がんの発生を予防する上で非常に有効です。アメリカの研究では、ポリープ除去によって大腸がんの死亡率を53%も減少させることができたというデータもあります。日本でも、大腸内視鏡検査が普及すれば、年間約5万人の大腸がんによる死亡者数を半減させることが可能なのではないかと考えています。
日本では、大腸内視鏡検査以外にも便潜血検査やCTC(CTコロノグラフィー)など、さまざまな検査方法が選ばれています。特にCTCは、オバマ元大統領が受けたことで知られ、画像診断で腸内を観察できる方法です。また、カプセル内視鏡も最近注目されていますが、治療を兼ねることができる大腸内視鏡による検査が、ポリープ発見後にその場で除去できる点で最も効果的です。

大腸内視鏡検査の障壁とその克服

大腸内視鏡検査を受けない理由として、いくつかの障壁が存在します。最も一般的なのは、検査前に飲む2リットルの下剤が非常に辛いという点です。また、検査自体に痛みを感じることがあるため、躊躇する人も多いです。さらに、検査には1日を費やすことが必要なため、時間的な負担も大きいと感じる人が多いです。
近年では、検査前の準備が改善されつつあり、より飲みやすく、量も少ない下剤が登場しています。さらに、検査自体も痛みを軽減する技術が進んでおり、従来の検査よりも快適に受けられるようになっています。このような新しい技術を活用することで、検査への抵抗感を減らし、より多くの人が検査を受けることができるようになっています。

平田悠悟プロフィール(平田肛門科医院 院長)
1982年 東京都生まれ。
筑波大学医学専門学群卒業。東京大学大腸肛門外科入局後、東京山手メディカルセンター大腸肛門病センターに出向し、
大腸肛門病の専門医としての豊富な臨床経験を積む。
2020年 東京大学大学院医学系研究科外科学専攻医学博士課程修了。
現在、平田肛門科医院の4代目院長。