裂肛[れっこう](切れ痔・裂け痔)

裂肛の症状と3つのタイプ

裂肛には、痛み、出血、違和感などの症状があります。長期化すると、分泌物が出たり、肛門狭窄などが起こることも有ります。

初期の段階でセルフケアにより治すことが大切です。

最初は排便時の痛みだけ進むと排便時以外でも痛む

裂肛でつらいのは、激しい痛みをともなうことです。これは、肛門上皮が脊髄神経の支配下にあり、痛みを感じる神経が発達しているためです。かたい便が出るときに、「痛い!」と思った瞬間に肛門括約筋が収縮してけいれんを起こし、切れた部位がさらに何度もこすれるために痛みがあとを引きます。

裂肛が慢性化する要因に、排便のたびに感じる痛みがいやで、便意が起きてもトイレに行くのをがまんしてしまうことがあります。その結果、便秘になり、直腸にたまった便は水分をどんどん吸収されてしまうので、時間がたてばたつほど便がかたくなります。ようやくトイレに行ったときには、カチカチになった便が治りかけている裂肛の傷口をこするので、さらに傷を深くしてしまいます。

このようにして、痛くて苦しい排便がますますこわくなり、トイレが遠のいて便秘をくり返すという悪循環が生まれます。

慢性裂肛では、排便直後には痛みはないものの、排便してから数十分後から、焼けるような痛みが生じるのが特徴です。

出血、違和感、分泌物などの症状をともなうときも

排便時の出血もよく見られる症状ですが、多量の出血はまれで、おしりをふいたトイレットペーパーに付着するぐらいです。裂肛では、肛門括約筋が緊張しているので、血管がふさがれて出血が止まるのだろうと考えられています。

裂肛のある部位が炎症のためにはれると、違和感が生じる場合もあります。炎症が持続して、裂肛の腸側に「肛門ポリープ」、皮膚側に「みはりいぼ」という外痔核ができて、それらが違和感を引き起こすこともあります。炎症が長期化すると、分泌物によって皮膚にびらんやかゆみが生じることもあります。また、肛門狭窄が起こることもあります。

裂肛の3つのタイプ その特徴と注意

裂肛の分類は専門医の間で統一されているものはありませんが、私は、単純性裂肛、慢性潰瘍性裂肛、ほかの急患にともなう裂肛(脱出性裂肛)、の3つに分類しています。

単純性裂肛

便秘になって、かたい便をいきんで出したり、激しい下痢が原因で肛門上皮が裂けたもので、ピリッとした痛みがあり、多くは出血をともないます。便秘の女性に見られる裂肛の大半がこのタイプです。

裂肛は1ヵ所の場合と、数ヵ所が治癒と増悪をくり返す場合があります。いずれの場合でも、多くは血流の少ない肛門管の後方にできます。このことと、肛門括約筋の過度の緊張が血流不足をまねくこととをあわせて考えると、たしかに便秘や下痢が裂肛を引き起こすきっかけとなるのですが、その根底には肛門上皮の虚血があると考えられます。

単純性裂肛では、肛門上皮の再生力は残っており、その下にある肛門括約筋は傷ついていません。したがって、ほとんどの場合、便通をととのえ、患部を清潔にして消炎薬を塗布すれば手術をしなくても治ります。

慢性潰瘍性裂肛

単純性裂肛をそのまま放置しておくと、何度も同じところが破れるので、裂け目が徐々に深くなり、傷が内肛門括約筋にまでおよぶようになります。すると、裂肛のまわりに炎症が起こって炎症性の肛門ポリープやみはりいぼができたり、裂け目に潰瘍ができたりして、肛門上皮が再生できなくなります。

こうなると、肛門が狭窄し、便が細かくなったり、排便しづらくなるので、手術によって裂肛とポリープやみはりいぼを切除する場合があります。

平田病院の場合、肛門狭窄や裂肛で手術が必要なケースは全体の約12%で、そのほかの患者さんは投薬と生活指導でよくなっています。

ほかの急患にともなう裂肛(脱出性裂肛)

内痔核や肛門ポリープが排便時に脱出する際に、側方の肛門上皮に裂傷が生じたものです。脱出時には痛みと少量の出血がありますが、脱出はくり返し起こるので、早めに肛門科で治療を受けることが必要です。

応急手当

市販の軟膏を患部に塗るか、坐薬を用います。

また、便秘の人は便をやわらかくするために水分を多くとり、食事のメニューに野菜や海藻などの植物繊維が豊富な食品を取り入れます。

激しい下痢の人は、内科の医師の診察を受けて、下痢の原因をつきとめることが必要です。

こんな症状があるときは裂肛の疑いが!

  • 排便時にいきんだ拍子に肛門がピリッと痛む。
  • 排便後もしつこく痛みがつづく。