裂肛[れっこう](切れ痔・裂け痔)

肛門狭窄[きょうさく]

裂肛がくり返し起こって長時間におよぶと、切れた粘膜が治るときに引きつれて、肛門が狭くなっていきます。その結果、便が出にくくなり、細かい便しか出せなくなるのが、肛門狭窄です。

肛門が狭くなり、便が出にくくなる

便意はあるのに便が出にくく、力むと鉛筆の太さほどの便がようやく出てくる、というのが肛門狭窄で、肛門が狭くなることが原因です。

肛門狭窄になる原因でいちばん多いのが、裂肛を何回もくり返すことです。肛門粘膜が裂けると、切れた粘膜が治るときに引きつれを起こします。裂肛が治るたびに肛門粘膜の引きつれが重なるので、肛門が少しずつ狭くなって、肛門狭窄になるのです。

この粘膜の引きつれは、次の例だとよくわかります。

ナイフなどで切り傷が皮膚にできると、傷口がだんだんふさがって、最後には1本の筋になります。この筋になった皮膚をよく観察すると、傷側に引っぱられていることがわかります。このように皮膚や粘膜にできた傷が治るときは、傷口の部分が収縮して周囲の皮膚や粘膜を引っぱるのです。

この引きつれが肛門の粘膜で起こると、肛門は筒状になっているので、肛門の円周が短くなって狭くなり、肛門狭窄になります。

裂肛以外の原因でも、肛門が狭くなることがあります。大きな内痔核を手術したときや、経験不足の医師が手術した場合などです。

出血、違和感、分泌物などの症状をともなうときも

初診時に肛門狭窄と思われても、その中に「にせの肛門狭窄」がまぎれこんでいることがあります。肛門括約筋は、患者さんが意識して締めることができるので、痛みや恐怖から無意識に肛門を締めているケースがあるからです。

肛門鏡を挿入すれば、「真の肛門狭窄」では肛門が十分開かないのに対して、にせの肛門狭窄では開くので、鑑別ができます。しかし、激しい痛みがあるので、このような検査はできません。そこで、肛門狭窄と思われる場合でも、約3ヵ月は、薬、食事や日常生活などで炎症を抑えるとともに、便通をととのえ、肛門への刺激が少なくなるように注意します。

その結果、便秘や下痢が起こらなくなり、裂肛も治ると肛門が広がることがあります。

平田病院では、肛門狭窄の手術率は18.5%にすぎません。手術が必要な場合の手術法は、スライディング・スキン・グラフト法(こちらのページ参照)が一般的に行われます。

ただ、これも早期発見が大切です。裂肛は女性に多く、そのため肛門狭窄になっても、恥ずかしがって、なかなか病院を訪れようとしない傾向があります。しかし、それは誤った考え方で、痔の悩みは一人でかかえ込むより、医師などに相談したほうが心が晴れるものです。

しかも、痔は命に別状のある病気ではありません。恥ずかしがったり、おそれたりする必要はないのです。少しでも自覚症状がある人は、できるだけ早く見てもらいましょう。

なお、裂肛を疑って肛門科を受診したときの検査は、痔核と共通のものがほとんどです。