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おしりの医学#015「痛い切れ痔!手術せずに済むには?」

女性は切れ痔、男性は痔瘻が多い

痔の三大疾患、内痔核・切れ痔・痔瘻とありますが、この割合は当院の場合、男性と女性で少し変わってきます。一番多いのは男女ともにほぼ6割が内痔核で、切れ痔は女性が15%、男性が8%と開きがあります。逆に痔瘻は男性が13%、女性が3%ですので、こちらは男性の方が多くなっています。
今回は切れ痔の原因と、女性に多い理由について説明します。

切れ痔が痛い理由

肛門管というのは、およそ皮膚から3センチ奥までを指します。そのほぼ中間にあるのが歯状線と呼ばれる部分で、胎児のときに皮膚から上ってきた部分と腸が下りてきた部分がドッキングしたのが、肛門管です。皮膚側と直腸側では性格が異なり、歯状線より外の皮膚側は当然神経があるので痛みがあり、歯状線より奥の腸側には神経がないので痛みを感じません。切れ痔というのは、歯状線より皮膚側の部分が裂けるため、強い痛みを感じることになります。

女性に切れ痔が多いのはなぜか

肛門に炎症を起こすと、粘膜が弱くなります。主な原因は、疲れ、ストレス、長時間座っていることなどが挙げられます。弱くなった肛門の粘膜を、硬い便が通過したり、強くいきむと力が加わって裂けてしまうのが切れ痔の原因です。
女性に切れ痔が多いのは、女性には便秘の方が多いからです。切れ痔になった女性の多い年代を調査すると、女性の20代後半、40代後半に集中しており、ちょうどこれが女性の便秘の分布と同じになっています。
女性に切れ痔が多い理由として、妊娠・出産・生理があります。特に生理前に便が硬くなったり便秘になる方がとても多いためです。生理中には逆に下痢気味になることが多く、これは性ホルモンバランス、黄体ホルモンの作用によって便が硬くなりがちなことが要因です。

切れ痔に予防するには

皆さんも硬い便をすると、どうしても肛門が痛くなるかと思います。でも2~3日もすれば痛みも出血も解消することが多いかと思いますが、この場合は「単純性裂肛」と呼ばれ、自然に治癒することがほとんどのケースです。便を柔らかくすれば、そもそも痛みや出血など起きないわけですから、食物繊維の多いもの、例えば納豆や寒天、コンニャクなどを摂取すれば、自然に回復します。硬い便のせいではなく、もし疲れが残っていて免疫力が下がっているのであれば、いつもより早く寝るようにする、ゆっくり入浴する、よく笑うなど、疲労回復やストレス解消に努めると効果があります。
女性の場合、生理が来る時期は大体予測がつきますから、生理の3日前くらいからプルーンを摂取したり、仕事量を少し減らすなど工夫して、便が硬くなるのを防ぐのも効果的です。
寝不足が続いている、外食ばかり・・という心当たりがあれば、風呂上りにところてんを少し食べるとか、いつもより一時間早く寝てみるなど、すぐにできる対策をぜひ行ってみてください。
しかし一週間このような生活改善をしても症状が改善しない場合は、やはり専門の肛門科を受診する必要があります。
他には、下痢がずっと続くと、切れ痔になってしまうケースも多くあります。これは、液状となった便が肛門の粘膜から吸収されてしまい、炎症がひどくなって切れてしまうからです。

切れ痔を放置すると手術が必要な場合も

切れ痔は放置しておくと、仮に症状が治まってもどんどん肛門が狭くなっていってしまう場合があります。腕や足など皮膚が切れたとき、治っていく際に週費の皮膚を引っ張りながらひきつれていきますが、これが肛門でも起き、切れた部分が元に戻る際に徐々に徐々に肛門が狭く(肛門狭窄)なっていき、ちょっとの原因でさらに切れやすくなってしまいます。
仮に肛門狭窄になってしまっても、当院では手術率は18.2%なので、8割強は手術なしで治っていきますが、あまり狭くなると手術せざるを得ませんので、何度も繰り返すようであれば早めに肛門科を受診し、生活改善指導を受けていただきたいと思います。

平田雅彦プロフィール(平田肛門科医院 院長)
1953年 東京都生まれ。
筑波大学医学専門学群卒業。慶應義塾大学医学部外科学教室に入局し、一般外科を研修。
社会保険中央総合病院大腸肛門病センターに入り、大腸肛門病の専門医としての豊富な臨床経験を積む。
現在、平田肛門科医院の3代目院長。