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Dr.Hipsが語る〜痔を知り、楽に治す方法〜

おしりの医学#016「痛い外痔核、痛くない内痔核」

いぼ痔とは一般的に「内痔核」と「外痔核」を指す

世間でよく「いぼ痔」と呼ばれている症状ですが、実はこれは医学的な用語ではありません。いぼ痔と総称されているものには、「内痔核」「外痔核」「肛門ポリープ」が含まれてしまうので、医師はこの用語を使いません。いぼ痔と呼ばれているもののほとんどは、この「内痔核」か「外痔核」を指しています。

「歯状線」より奥は内痔核、手前は外痔核

内痔核と外痔核の違いは何かというと、肛門の構造に関わってきます。肛門というのは3センチほどの管で、その中間には「歯状線」(しじょうせん)と呼ばれる部位があります。お母さんのお腹の中で成長する過程で、「原始直腸」が下がってきて、肛門にあたる場所の皮膚が上がり、トンネル工事のように最終的にドッキングして肛門が完成します。この、ドッキングした印が、歯状線として残ります。
肛門というのは、皮膚から歯状線の1.5センチ、歯状線から直腸まで1.5センチの合計約3センチの部分になります。ここで重要なのは、歯状線から直腸までの奥側は、腸と同じ性格のため、痛覚がありません。逆に、歯状線から浅いほう、皮膚側はまさに「皮膚」ですから、何かあれば痛みを感じます。
つまり、歯状線を境に性格の違う場所にできた疾患を分けるために、歯状線より奥にできた痔を「内痔核」、歯状線より手前(皮膚側)にできたものを「外痔核」と呼んでいます。なぜかというと、それぞれ症状が異なるからです。

内痔核は「肛門のクッション」が腫れたり崩れることで起こる

もともと肛門には、唇と同じような“クッション”が備わっています。そのクッションが、病的に腫れたりしてしまうことを、「痔核」と呼びます。内痔核の場合、なんらかの契機で粘膜が炎症を起こすと、血管を増幅させる因子が働くことで、膨れていくことで発症します。また、肛門のクッションには、「支持組織」と呼ばれるコラーゲンでできた部分があり、これは筋肉と粘膜の間にコラーゲンファイバーとして存在していますが、これが加齢とともに崩れたり、強くいきむことで破壊されるなどして剥がれてしまうと、元にもどることができません。こうした支持組織の破壊が起こると、内痔核発症の原因になってきます。
この「内痔核」は、腸側の疾患ですから、痛みがありません。内痔核はその症状を1度から4度に分類されています。1度が最も軽く、排便時に出血が認められるもの。2度は排便時に肛門が脱出するが立ち上がると元に戻るもの、3度は同じく脱出後に手で戻さないと戻らないもの。4度は脱出したままの状態、です。なぜ痔核の大きさで分類しないかという疑問もあるかもしれませんが、横になっているときと立っているときでうっ血量が異なり、大きさが変化するため、正確な大きさを測ることができないからです。

外痔核の手術率はほぼゼロ

外痔核は、神経が過敏な場所で発症しますので、通常はかなりの痛みを伴います。すぐに手術を希望される患者さんも多いのですが、今は良い薬もあり、ここ5年間では「血栓性外痔核」で手術したことは一度もありません。5年間というと約6万人の患者さんに来ていただいていますが、手術はゼロです。とはいえ放置を続けると、古い外痔核が残り、デコボコになってしまう場合がありますので、痛みがあるときは早めに受診し、綺麗にしてしまうほうが賢明です。

肛門のデコボコは古い外痔核の跡

余談ですが、特に女性で、「デコボコしていてみっともないから切ってほしい」と言われる方がいますが、医学的にはその外痔核の痕跡が炎症の元となるのであれば治療の対象となりますけども、疾患の原因ではなくただの結果であれば、手術の対象にはなりえません。仮に切ったとしても、また数年後に再発してしまうでしょうから、何より生活改善が優先であると考えています。

7年放置しても手術に至るケースは12%

当院でアンケートを取りまして、「もしかして痔かもしれない」と気づいてから、最初の受診までにかかる時間を調べたところ、なんと平均で7年でした。なぜ7年も放置していたのかという理由については、「病院にかかるとすぐに手術をされてしまうのでは」という恐怖心が最多でした。ですが、仮に7年放置していて来院された患者さんがどのくらい手術を受けるかというと、たったの12%です。8割以上のケースで、腫れが引いて共存可能です。海外の例をとってみても、手術になるのはほとんどの国で5~8%程度です。ですので、手術になるのはよほどひどい場合だけで、ほぼ生活改善で良くなっていきます。

腸の内視鏡検査で痔が発覚することも

大腸の内視鏡検査を受けると、痔の状態を見てくれる先生が多くいらっしゃいます。ですので、内視鏡検査受診後に「肛門科で診てもらったほうがよい」と言われて来院された患者さんもいます。もしそんなアドバイスを受けたら、可能な限り早く近くの肛門科を受診し、出血するとか脱出などしてしまう前に治療を始めることが大切です。早めに対処すれば手術など一切しなくて済みますし、生活指導だけで完治も目指すことができますから。
出血があったので痔だと思っていたら直腸がんだったというケースも増えているので、放置せずにすぐに診てもらえば治療も軽く済みますから、40歳を過ぎたら内視鏡検査も受けたほうが安心かと思います。

平田雅彦プロフィール(平田肛門科医院 院長)
1953年 東京都生まれ。
筑波大学医学専門学群卒業。慶應義塾大学医学部外科学教室に入局し、一般外科を研修。
社会保険中央総合病院大腸肛門病センターに入り、大腸肛門病の専門医としての豊富な臨床経験を積む。
現在、平田肛門科医院の3代目院長。

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