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おしりの医学#021「内痔核は手術が必要?」

内痔核は手術なしで治療、が世界の流れ

内痔核には手術が必要か、必要ならどんな手術なのかというご質問がありました。
もともと内痔核は生活習慣病ですから、きちんと生活習慣を変えて、3カ月間生活指導を続けながら投薬による保存療法を行うことで、ほとんどの患者さんが手術なしで共存可能です。
世界の内痔核の手術率は、アメリカで4%、ドイツが7%、イギリスが6%です。
ドイツの教科書には、”内痔核の手術はほとんど必要ない”と書かれているほどです。つまり、世界ではきちんとした生活指導を行い、なるべく手術をしないようにするのが大きな流れになっています。

3か月間の生活指導で約9割が共存可能に

実態はどうかというと、「とても痛い」「排便時に脱出する」「出血が止まらない」などの理由ですぐに手術してほしいと仰る患者さんも多く来院されますが、まずは3か月間、生活指導を行い、薬を飲みながら生活を変えてみませんかという提案をしています。結果、3カ月後に88%の患者さんが手術不要になり、共存可能となります。当院での内痔核の手術率は12%です。

ステージ3、ステージ4は手術が必要に

その手術の必要な12%の患者さんはどのような人か。3か月生活習慣を変えてみても、排便時に脱出して手で押し戻す必要があったり、出たままになってしまうような、世界分類でいう「ステージ3から4」の状態であると、またすぐに炎症を起こしますから、この場合は手術の適用となります。また、炎症をコントロールできない場合も、手術となります。

内痔核の手術のポイント①

内痔核の手術のポイントについて説明します。
内痔核というのは、丸い玉ではなく、サツマイモのように、直腸から続く細長いタラコ状のものです。ですので、内痔核の手術を完全に行うには、直腸まで行って摘出する必要があります。これが、内痔核手術のポイントの第一となります。
つまり、直腸まで触りますから、入院が必須になるということです。通院の場合は、浅い場所までしか対処ができず、奥の方は取れないケースが多くなります。
直腸からの摘出となると、出血があると危険なため、必ず入院していただくこととなります。やはり完治を目指すことがベストですので、入院での手術が理想的です。

内痔核の手術のポイント②

第二に、括約筋に傷をつけずに手術できるか、ということも重要なポイントです。括約筋に傷をつけずに手術ができれば、理論的には後遺症は一切出ません。
当院には、日本に110人しかいない、「日本大腸肛門病学会」の指導医が2人1チームで手術を担当します。しかも、その1チームでの手術は、集中力を高めるために一日あたり3例までしか実施しません。

集中力を高めて切り方をデザイン

内痔核というのは1か所だけではなく、3か所に発生している場合も多いので、それらを大きく切除してしまうと粘膜が足りなくなり、肛門が狭くなってしまうことがあります。ですので、「ここは狭く」「ここは広く大きめに」といった、”切り方のデザイン”が重要になります。このデザインを正確に見極め、処置する
ためにもしっかりと時間をかけ、落ち着いて2人1チームでの手術を実施することが重要になると考えています。
このように、括約筋を保護できれば、手術の痛みはないと考えています。また、機能的な後遺症もまったく発生しません。

レーザー照射で小さくする治療法も

当院の手術率が12%であるとお話しましたが、このうち半分は「ICG併用半導体レーザー照射法」を適用し、レーザー光線によって内痔核を小さくする手法を適用しています。厳密には、この治療法はドイツでは手術として認められていませんので、平田医院での手術率は6%ということができ、つまりはドイツと同レベ
ルであるということになります。
今、長期入院が難しいという場合、このレーザー照射によって小さくするという処置でも、満足度は90%を超えていますので、こうした新しい治療法も選択可能となっています。

平田雅彦プロフィール(平田肛門科医院 院長)
1953年 東京都生まれ。
筑波大学医学専門学群卒業。慶應義塾大学医学部外科学教室に入局し、一般外科を研修。
社会保険中央総合病院大腸肛門病センターに入り、大腸肛門病の専門医としての豊富な臨床経験を積む。
現在、平田肛門科医院の3代目院長。