おしりの医学

HOME | 痔の治療に関するコラム | おしりの医学 | おしりの医学#036「痔瘻(痔ろう)の種類について」

Dr.Hipsが語る〜痔を知り、楽に治す方法〜

おしりの医学#036「痔瘻(痔ろう)の種類について」

痔瘻はおしりの病気の中でもポピュラーな病気ですが、症状によって様々なタイプに分かれていることを知っている人は少ないのではないでしょうか。今回は痔瘻の種類について解説していきます。

痔瘻とは

痔瘻とは直腸から肛門周囲の皮膚に亘って穴が開いてしまう病気のことです。直腸と肛門の間には、歯状線という皮膚と粘膜の境目が存在します。歯状線には肛門陰窩(こうもんいんか)という小さなくぼみがあり、肛門腺と呼ばれる粘液を出す器官があるのが特徴です。肛門陰窩には基本的に便が入り込むことはありません。
しかし、下痢などの際にまれに便が入り込むことがあり、細菌が繁殖してしまうことがあります。肛門陰窩が細菌によって化膿してしまうと潰瘍ができ、進行すると皮膚にまで穴が開き、最終的に貫通してしまうのです。

痔瘻は全部で4種類

一口に痔瘻といっても、症状は1種類ではありません。肛門科の第一人者である隅越幸男氏によって4種類に分類されており、それぞれⅠ~Ⅳ型痔瘻と呼ばれています。それぞれ治療の難易度などが大きく異なるので、診断を受けた際に病状の重さを自覚するためにも、しっかりと把握しておきましょう。

Ⅰ型痔瘻は珍しいタイプの痔瘻

Ⅰ型痔瘻は皮膚痔瘻とも呼ばれるタイプの痔瘻で、痔瘻の中では珍しいものになります。最大の特徴は肛門括約筋を貫通しないことです。
先述の通り、痔瘻になると直腸から肛門周囲の皮膚に亘ってトンネル状の穴が開きます。痔瘻の穴は多くの場合、肛門付近に存在する肛門括約筋を通過するのですが、Ⅰ型痔瘻の場合は肛門括約筋を通らず、より肛門に近い位置に穴が開くのが特徴です。

Ⅱ型痔瘻は最も多いタイプの痔瘻

Ⅱ型痔瘻は最も症例が多いタイプの痔瘻です。Ⅰ型痔瘻は肛門括約筋を通らないのが特徴でしたが、Ⅱ型痔瘻では肛門括約筋を縫うように穴が開くため、より症状が重くなります。また、痔瘻の穴の進行方向によって「低位筋間痔瘻」と「高位筋間痔瘻」に分類されるのも特徴です。

Ⅲ型痔瘻は大きな手術が必要なタイプの痔瘻

Ⅲ型痔瘻は肛門括約筋を通って仙骨付近にまで穴が達してしまうタイプのもので、「坐骨直腸窩痔瘻」とも呼ばれています。肛門の背側から穴が開き、肛門括約筋と仙骨の間に存在するコートネイスペースと呼ばれる部位で穴が大きくなりやすいのが特徴です。
病巣が大きくなりやすいこともあって病状が重くなりがちで、大きな手術が必要になります。

Ⅳ型痔瘻は特にまれな痔瘻

Ⅳ型痔瘻は「骨盤直腸窩痔瘻」とも呼ばれるタイプの痔瘻で、発生は非常に稀です。肛門挙筋と呼ばれる肛門括約筋よりも外側の筋肉にまで達するのが特徴で、一度痔瘻の手術を受けた経験のある人が発症しやすいといわれています。

痔瘻は手術が必要な可能性が高い病気

痔瘻には様々なタイプがありますが、基本的には手術が必要になる病気です。タイプによって手術方法が異なる上、選択肢が多いので、手術の際には医師の話を良く聞き、しっかりと相談することが重要になります。特にⅢ型痔瘻は医師によって様々な方法論を持っていますが、基本的にはいかに肛門括約筋を保護できるかを重視して医療機関を決めると良いでしょう。

平田雅彦プロフィール(平田肛門科医院 院長)
1953年 東京都生まれ。
筑波大学医学専門学群卒業。慶應義塾大学医学部外科学教室に入局し、一般外科を研修。
社会保険中央総合病院大腸肛門病センターに入り、大腸肛門病の専門医としての豊富な臨床経験を積む。
現在、平田肛門科医院の3代目院長。