Dr.Hipsが語る〜痔を知り、楽に治す方法〜
おしりの医学#037「シートン法とは?」
痔瘻の手術方法には様々なものがありますが、中でもシートン法は特殊です。肛門括約筋を保護できる手術方法には及ばないものの、メスを入れるよりは身体へのダメージを抑えて痔瘻を治療できます。今回はシートン法について、メリットや選択すべき症状などを紹介していきます。
シートン法とは
シートン法は痔瘻の手術方法の1つです。「おしりの医学#036「痔瘻(痔ろう)の種類について」でも解説していますが、痔瘻とは直腸から肛門周囲の皮膚に亘ってトンネル状の穴が開いてしまう病気です。
痔瘻の直腸側の入り口を一次口、終点にあたる皮膚周囲の穴を二次口と呼びます。シートン法では肛門を通して一次口から糸を入れ、痔瘻の穴を通し、二次口から出した上で縛り上げることで、痔瘻の穴をゆっくりと切除していきます。
シートン法のメリットとデメリット
シートン法は患部を徐々に切除することになるので、メスを入れるよりは肛門括約筋を保護できるのがメリットです。しかし、肛門括約筋にダメージを与えてしまうのは事実で、術後に患部がデコボコになってしまうことがあります。可能であれば医師と相談の上、肛門を保護できるような手術法を選択した方が良いでしょう。
シートン法と相性が良い症例
シートン法と特に相性が良いのがクローン病による痔瘻です。クローン病による痔瘻は一般的な痔瘻に比べて傷の治りが悪いため、肛門括約筋を温存できる手術方法でもきれいに治らない可能性があります。よって、肛門括約筋を温存できる手術方法は選択肢から外れることが多く、メスを入れるよりはダメージが少ないシートン法を利用することが多いです。
痔瘻の治療は可能な限り括約筋保護法がおすすめ
シートン法はメスを入れるよりは患部のダメージを抑えることができるものの、肛門を切ることになるのは変わりありません。肛門括約筋や肛門に対するダメージを最小限に抑えたいのであれば、シートン法よりも肛門括約筋を温存できる手術方法を選択したほうが良いでしょう。
ただし、クローン病による痔瘻の場合はきれいに治らないことが多いこともあって、シートン法を利用することが多いです。痔瘻の手術方法には様々なものがあるので、自身の症状を理解した上で医師としっかりと相談し、お互い納得できる手術方法を選択するようにしましょう。
平田雅彦プロフィール(平田肛門科医院 院長)
1953年 東京都生まれ。
筑波大学医学専門学群卒業。慶應義塾大学医学部外科学教室に入局し、一般外科を研修。
社会保険中央総合病院大腸肛門病センターに入り、大腸肛門病の専門医としての豊富な臨床経験を積む。
現在、平田肛門科医院の3代目院長。