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おしりの医学#053「手術をする前のチェックポイント③〜裂肛(切れ痔))」

痔の中でも特に症例が多い裂肛は、排便時に痛みを伴うため、一刻も早く治療したいと考える人が多いでしょう。しかし、早く治したいからといって手術をするのは早計です。今回は痔の症状でもメジャーな裂肛について、手術の必要性と治療法をお話しします。

裂肛(切れ痔)とは

裂肛とは肛門付近の皮膚や粘膜が裂け、外傷が生まれることによって生じる症状のことです。下痢による肛門の炎症や、硬い便による肛門への負担が原因で発症します。排便時に強い痛みがあるのがあり、出血も伴うことがあるのが特徴です。詳しくは「裂肛の原因と発症の仕方」で解説しています。

裂肛(切れ痔)の場合はほとんど手術が必要ない

基本的に、裂肛で手術が必要になることはほとんどありません。粘膜は2ヶ月周期で生え変わります。粘膜の再生に合わせて切れ痔も自然と治っていくため、手術が必要になること自体が少ないです。
切れ痔には慢性のものもあり、だんだん傷口が固くなって利用が難しくなるといわれています。しかし、実際には生活習慣の改善と薬の使用で治療していけば、徐々に傷口が柔らかくなっていくため、やはり手術を行う必要はありません。
事実、当院では急性の裂肛5年、慢性の裂肛でもここ2~3年は手術の例はないです。ただし、肛門狭窄という症状で肛門自体が狭くなってしまい、結果的に肛門が切れてしまう場合は手術が必要になることがあります。

裂肛ができた時の具体的な治療方法

先述の通り、裂肛ができたときは手術ではなく生活習慣の改善と薬の使用によって治療していきます。具体的には、肛門に負担をかけることなく排便をするための習慣を身に付け、食事の内容を変えていくことが必要です。
まず、排便時の負担を減らすためには、朝にスムーズに便が出るような習慣を身に付けなければいけません。基本的に排便は自律神経の反射によって引き起こされます。排便に関わる反射には「起立反射」と「胃結腸反射」が存在し、それぞれ反射が起こるメカニズムが異なるのが特徴です。
「起立反射」は朝にベッドから身体を起こすときに起こる反射です。軽い運動をすることでも誘発することが可能なので、起きてすぐストレッチなどの軽い運動をすることで、便意を引き起こすことができます。
「胃結腸反射」は胃に食べ物や飲み物が入った時に起こる反射です。胃が膨らめば起こる反射なので、起き抜けに水を飲むことで反射を引き起こせます。起きてすぐに水を飲み、軽い運動をすることで、肛門に負担をかけることなく排便が可能です。詳しくは「新刊連動企画『マンガでわかる痔の治し方』 LESSON3」をご覧ください。
食事については食物繊維が豊富な食材を選び、唐辛子やニンニクといった香辛料を食べないことが重要です。詳しくは『おしりの医学#007「痔に良い食べ物・悪い食べ物」』で解説しています。
薬については基本的に外用薬を使用し、状況に応じて内服薬を使用します。外用薬は基本的に座薬が優れていますが、裂肛の場合は軟膏タイプのものを使用するのがおすすめです。痔の薬の選び方については『おしりの医学#046「痔の治療薬はどれが良いの?」』で解説しているので、合わせてご覧ください。

平田雅彦プロフィール(平田肛門科医院 院長)
1953年 東京都生まれ。
筑波大学医学専門学群卒業。慶應義塾大学医学部外科学教室に入局し、一般外科を研修。
社会保険中央総合病院大腸肛門病センターに入り、大腸肛門病の専門医としての豊富な臨床経験を積む。
現在、平田肛門科医院の3代目院長。