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おしりの医学#054「手術をする前のチェックポイント④〜肛門狭窄)」

肛門付近の粘膜にできた傷を再生した結果、肛門が狭くなってしまう肛門狭窄。治療には手術が必要ですが、肛門が狭くなっている原因は肛門狭窄ではなく、他の要因であることが多いです。今回は肛門狭窄になった際、手術前に確認したいポイントについてお話しします。

肛門狭窄とは

肛門狭窄とは肛門自体が狭くなってしまう症状です。裂肛が肛門の粘膜にまで広がると、再生時に粘膜が引きつれを起こします。裂肛を何度も繰り返すと粘膜の引きつれが重なり、肛門が狭くなっていってしまうのです。
上記の他にも、内痔核で大がかりな手術をした場合や、経験不足の医師が手術を行った場合にも肛門が狭くなってしまうことがあります。痔の治療のために手術をすると肛門狭窄になってしまうリスクがあるので、極力手術を行わないで治療をすることが重要です。

まずは本当に肛門狭窄か見極める必要がある

基本的に肛門狭窄になってしまった場合は手術をしなければいけません。しかし、すぐに手術を行う前に、本当に肛門狭窄なのかを見極める必要があります。というのも、実は肛門が狭くなっているからといって必ず肛門共作であるとは限りません。
肛門の炎症や切れ痔があると、痛みで肛門括約筋が緊張し、どうしても肛門を締めがちになってしまいます。よって、単純に肛門が狭くなっているからといって肛門狭窄であると決めつけるのは早計です。
まずは炎症や切れ痔だった時に治療できるよう、生活習慣の改善と薬の使用をしつつ3ヶ月ほど様子を見ます。肛門が狭くなっている原因が炎症や切れ痔だった場合は、治療が進むにつれて徐々に肛門が開いていきます。
3ヶ月間生活習慣の改善と薬の使用で治療を続ければ、切れ痔や炎症などが治療されてもなお肛門が狭いようであれば、肛門狭窄の可能性が高いです。しかし、当院でも肛門が狭くなった患者の手術率が18%と少な目なので、多くの方は保存療法で改善できるでしょう。

肛門が狭くなった時の治療方法

先に述べた通り、肛門が狭くなる原因の多くは肛門狭窄よりも切れ痔や炎症になります。人間の粘膜は2ヶ月周期で再生するので、3ヶ月間治療を続ければ改善されることが多いです。
炎症や裂肛の治療時には、肛門に負担をかけることなく排便をするための習慣を身に付け、食事の内容を変えていくことが重要になります。
まずは排便時の負担を減らすために、朝に負担なく排便できるような習慣を身に付けましょう。スムーズな排便をするために重要なのは、便意がある時にトイレに行くことです。便意は「起立反射」と「胃結腸反射」という自律神経の反射によって引き起こされます。
「起立反射」は朝にベッドから身体を起こすときに起こる反射です。軽い運動で反射を増強できるので、ストレッチなどの軽い運動をするのが有効になります。
「胃結腸反射」は胃に食べ物や飲み物が入った時に起こる反射です。水を飲むだけでも引き起こせる反射なので、起き抜けに水を飲むことで朝の排便をスムーズに行うことができます。詳しくは「新刊連動企画『マンガでわかる痔の治し方』 LESSON3」をご覧ください。
食事については食物繊維が豊富な食材を選び、唐辛子をはじめとした刺激の強い食材を避けることが重要です。詳しくは『おしりの医学#007「痔に良い食べ物・悪い食べ物」』で解説しています。

肛門が狭くなってもすぐに手術をせず様子を見よう

肛門狭窄は肛門の粘膜が引きつれを起こすことで、肛門が狭くなってしまう病気です。肛門狭窄の治療には手術が必要ですが、そもそも肛門が狭くなっている理由が肛門狭窄であるケースは多くありません。
実際には肛門の炎症や切れ痔にの影響で肛門括約筋が緊張した結果であることが多いです。よって、生活指導と薬の処方をしつつ様子を見れば、手術することなく改善する傾向にあります。
肛門が狭くなったからといって肛門狭窄であると決めつけず、まずは医師の診察を受けて原因を特定し、適切な治療を行うようにしましょう。

平田雅彦プロフィール(平田肛門科医院 院長)
1953年 東京都生まれ。
筑波大学医学専門学群卒業。慶應義塾大学医学部外科学教室に入局し、一般外科を研修。
社会保険中央総合病院大腸肛門病センターに入り、大腸肛門病の専門医としての豊富な臨床経験を積む。
現在、平田肛門科医院の3代目院長。