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Dr.Hipsが語る〜痔を知り、楽に治す方法〜

おしりの医学#056「いぼ痔は自分で治せる!」

近年は生活習慣の乱れやテレワークの普及による運動不足が原因で、いぼ痔になる人が増えています。いぼ痔の症状に悩む方の中には病院に通う時間がなく、なんとか自分で治したいと考える人も多いでしょう。実はいぼ痔は自力で治すことが可能です。今回はいぼ痔を自力で改善していく方法や、治療時の注意点などについてお話しします。

いぼ痔を完全に消すことは難しい

そもそもいぼ痔を完全に消すことは難しいです。便秘でいきむことや長時間座っていることが多いと、肛門付近の血管がうっ血してしまいます。結果、血管の周りにある結合組織が増殖し、いぼのようになったのが痔核です。
実は痔核を薬などで完全に消滅させることはできません。よって、基本的に一度できた痔核とは生涯を共にすることになります。しかし、痔核をなくすことはできなくても、痔核が要因で起こる症状をなくすことは可能です。
痔核によって痛みや出血といった症状が出ている時は多くの場合、痔核が炎症によって大きくなって起こっています。つまり、炎症を抑えて痔核が小さくなれば、症状が消えて問題なく日常生活を送ることが可能です。
実際、核痔が原因で手術をすることは全体の12%ほどで、基本的には生活指導や薬の使用で治療していくことになります。

いぼ痔を自分で改善する方法

先に述べた通り、いぼ痔で手術になることは少ないです。一般的には生活指導により生活習慣の改善と、薬の使用で治療していくことになります。治療が長期になっても問題ないのであれば、生活習慣の改善のみでも治療できるので、自力で改善することも可能です。
自力でいぼ痔を改善したいのであれば、まずはいぼ痔が悪化してしまう生活を理解し、生活を改めることが重要です。例えば、睡眠不足や運動不足は免疫力の低下を招くため、炎症が起こりやすくなります。他にも暴飲暴食や偏食によって下痢や便秘が続いてしまうことも、炎症の原因になるので注意が必要です。
近年特に増えているのが長時間座っていることが原因のいぼ痔になります。テレワークの普及によって朝の通勤時の運動量がなくなってしまったことが要因なので、家でデスクワークしている時も時折立ち上がり、スクワットやストレッチをするのがおすすめです。
炎症が収まって症状が出なくなれば、入院や手術をする必要はありません。自力でいぼ痔を治したいのであれば、生活習慣を見直し、肛門に負担がかからないようにしましょう。

本当にいぼ痔かを自分で判断するのは危険

いぼ痔は生活習慣の改善によって自力で治すことが可能ではありますが、身体に現れている症状の原因が本当にいぼ痔なのかはしっかりと確認しておく必要があります。実はいぼ痔と直腸がんの初期症状には共通点が多いです。よって、いぼ痔だと思って診察を受けたら直腸がんだったというケースも少なくありません。
特に内核痔の場合は注意が必要です。内痔核とは肛門の皮膚と粘膜の境界線である歯状線よりも内側にできた痔核のことで、普段は目視することができません。よって、診察を受けないと内痔核か直腸がんなのか判断することが不可能です。
内痔核の症状があるのであれば、自力で治そうとする前に一度医師の診察を受け、症状の原因が本当に内核痔なのか確認することをおすすめします。

病状を正確に把握したいのであれば医師の診察を受けよう

いぼ痔は自力で治せる病気です。いぼ痔自体がなくなることはありませんが、いぼ痔の症状は炎症によって腫れが大きくなることで生じるため、炎症を抑えることさえできれば共存していくことが可能です。
いぼ痔の炎症を抑えたいのであれば生活習慣を改善し、免疫力を高めることが重要になります。また、下痢や便秘も炎症を引き起こす原因になるので、食生活を改善し、快適な排便を実現することも必要です。
ただし、いぼ痔の症状は直腸がんの初期症状と似ているので注意しなければいけません。特に内痔核の場合は目視で判断することができないので、一度は医師の診察を受けて、症状の原因を的確に把握することをおすすめします。

平田雅彦プロフィール(平田肛門科医院 院長)
1953年 東京都生まれ。
筑波大学医学専門学群卒業。慶應義塾大学医学部外科学教室に入局し、一般外科を研修。
社会保険中央総合病院大腸肛門病センターに入り、大腸肛門病の専門医としての豊富な臨床経験を積む。
現在、平田肛門科医院の3代目院長。