Dr.Hipsが語る〜痔を知り、楽に治す方法〜
おしりの医学#057「 痔瘻(じろう)は自分で治せるのか?」
痔瘻は痔の中でも特に重症化しやすい病気です。症状も重くなりがちなのですぐに医師の診察を受けるのがおすすめですが、中には病院に通う時間がないため、自力で治したいという方も多いでしょう。しかし痔瘻は基本的に治すことができません。今回は痔瘻で手術が必要になる理由や、手術を受ける前の注意点などを紹介します。
痔瘻は自分で治すことができない
結論から言えば、痔瘻は自分で治すことができません。痔の症状として多い切れ痔やいぼ痔は生活習慣の改善と薬の使用で治療できるのですが、痔瘻は病巣を切除する必要があるため、どうしても手術が必要となります。
そもそも痔瘻とは、肛門の皮膚と粘膜の境界線である歯状線にあるくぼみに便が入り込み、炎症を起こしてしまう病気です。歯状線のくぼみが炎症を起こすと化膿してしまい、くぼみにどんどん穴を開けてしまいます。
炎症によってできた穴は最終的に肛門付近の皮膚にまで達し、トンネルのようになってしまいます。また、トンネルの途中に原発巣と呼ばれる空間ができることもあり、原発巣が大きくなってしまうと病状が重くなるのも特徴です。
痔瘻は放置するとがん化することもあるため、手術によって的確に切除する必要があります。ただし、痔瘻が肛門括約筋を貫通している場合、括約筋ごと切除してしまうと術後の日常生活に支障が出ることが多いので、可能な限り肛門括約筋を保護しながら手術を行うことが重要です。
本当に痔瘻なのかを判断することが重要
先に述べた通り、痔瘻は手術が必要になる病気です。しかし、手術の前に本当に痔瘻なのかを判断することが重要になります。というのも、痔瘻を特定するのは医師でも難しいことが多いです。
痔瘻の特徴である痛みやしこりがあったとしても、痔瘻のトンネルが肛門付近の皮膚を貫通するまでは目視で判断できないので、内痔核などと勘違いされることがあります。事実、当院に痔瘻と診断されて来院された患者さんの中にも、実際には別の症状だったという方が多いです。
痔の手術は身体への負担が大きいので、必要がなければしないに越したことはありません。よって、当院では確実に痔瘻であると判断できない場合は、生活指導と薬の使用をしつつ3ヶ月ほど様子を見ます。
痔瘻以外の症状だった場合は上記の治療で症状が改善されることが多いです。また、痔瘻の症状だったとしても初期段階だった場合は、上記の治療法で治ることがあるので、手術を行う必要はありません。もし痔瘻という診断がされたとしても、専門の病院で確実に痔瘻であると診断されるまでは手術をせずに様子を見るのが良いでしょう。
ただし、痔瘻は再発しやすい病気なので、上記の治療法で改善できたとしても原因が痔瘻の初期症状だった場合は、年に3~4回ほど医師の診察を受けるのがおすすめです。再発したとしても初期段階で発見できれば、再度生活習慣の改善と薬の使用で改善できます。
痔瘻と判断されても確実出ない場合は様子をみよう
痔瘻は確実に手術が必要になる病気です。しかし、初期段階の痔瘻を的確に診断するのは医師でも難しいため、痔瘻と診断されても別の症状である場合もあります。よって、確実に痔瘻でない限りは生活習慣の改善と薬の使用による治療で様子を見たほうが賢明です。
痔瘻に限らず、痔の手術は身体への負担が大きいので、手術は可能な限り避けたほうが良いでしょう。痔瘻も初期段階であれば生活習慣の改善と薬の使用で治療できる可能性があるので、目視で分かるほど進行していないのであれば保存療法による改善を期待しましょう。
ただし、痔瘻は再発しやすい病気です。保存療法で治療できたとしても症状の原因が初期の痔瘻だった場合は再発する可能性があるので、定期的に医師の診察をおけることをおすすめします。
平田雅彦プロフィール(平田肛門科医院 院長)
1953年 東京都生まれ。
筑波大学医学専門学群卒業。慶應義塾大学医学部外科学教室に入局し、一般外科を研修。
社会保険中央総合病院大腸肛門病センターに入り、大腸肛門病の専門医としての豊富な臨床経験を積む。
現在、平田肛門科医院の3代目院長。