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Dr.Hipsが語る〜痔を知り、楽に治す方法〜

おしりの医学#059「内痔核と外痔核の違い」

いわゆるいぼ痔と呼ばれる症状は、基本的に内痔核と外痔核に分けられます。いぼ痔に悩んでいる人の中には、外痔核と内痔核の違いがよく分かっていない人も多いでしょう。今回は内痔核と外痔核の違いについてお話しします。

内痔核と外痔核の違い

内痔核と外痔核の明確な違いは、痔核ができる場所です。肛門には皮膚と粘膜の境界線である歯状線と呼ばれる部位があります。基本的には、歯状線よりも内側にできた痔核が内痔核、外側にできた痔核が外痔核です。
内痔核と外痔核ができる原因を明確に分けることはできませんが、外痔核になりやすい人と内痔核になりやすい人には、それぞれある傾向があります。基本的に、痔核ができる原因はいきむことです。内痔核は排便時のいきみが原因になることが多いのですが、内核痔になりやすい人と外痔核になりやすい人では、いきむシチュエーションが異なる傾向があることが分かっています。
まず、内痔核になりやすい人は排便時にいきんでいることが多いです。対して、外痔核になりやすい人は、排便時以外にいきんでいることが多い傾向があります。つまり、スポーツなどで踏ん張る機会が多い人は外痔核になりやすいということです。
当院でも、東京マラソンの翌日に外痔核が腫れて来院される人が次々と来院し、生活指導や薬での治療を行った経験があります。

外痔核の治療法

外痔核は歯状線の外側で腫れるため、目視で確認できるほか、直接触ることができます。肛門付近に外痔核があると不格好なこともあり、外痔核を肛門の内側に押し込もうとしてしまう人も多いです。
しかし、外痔核を頻繁に触ったり、指で肛門の内側に押し込もうとすると、炎症を引き起こして症状が悪化してしまう可能性があります。外痔核を治療したいのであれば、基本的に外痔核には触らず、軟膏の薬を塗って安静にすることが重要です。
また、香辛料やお酒を控えるなど、排便が乱れるような食べ物や飲み物を摂らないことも改善につながります。外痔核は疼痛を伴うので、手術が必要だと不安になる人も少なくありません。しかし、実際には手術は必要ありません。当院に来院する時も安心していらしていただければ幸いです。

内痔核の治療法

内痔核は外痔核のように直接触ることができないので、触ることで悪化するようなことはありません。しかし、便秘で排便時に負担がかかったり、下痢で粘膜にダメージが蓄積されると、炎症を起こして症状が悪化してしまう可能性が高いです。
また、生活習慣の乱れによって免疫力が低下することでも炎症がおこり、症状が悪化してしまいます。よって、内痔核の治療では生活指導による生活習慣の改善と、薬の使用による治療を行うことが多いです。
具体的には睡眠不足を避け、規則正しい生活を徹底します。また、長時間座っていることや運動不足も内痔核の原因となるので、寝起きや仕事中にストレッチを挟むなど、軽い運動を日常に取り入れることも重要です。
加えて、下痢や便秘を避けるために食生活の改善も目指します。基本的には和食のように、刺激が強い香辛料を使用せず、食物繊維が多い食事を意識して摂るのがおすすめです。また、お酒は下痢の原因になるので、避けた方が賢明でしょう。
薬は外痔核の場合は軟膏タイプが有効でしたが、内痔核の場合は肛門の内側まで届かないので、座薬タイプを使うことをおすすめしています。市販薬に多い注入軟膏タイプは患部まで届かないことも多い他、ステロイドが含有されており、粘膜を弱くしてしまうため推奨していません。詳しくは『おしりの医学#046「痔の治療薬はどれが良いの?」』で説明しているので、合わせてご覧ください。

内痔核と外痔核の違いを把握して適切な治療をしよう

内痔核と外痔核の違いは痔核ができる位置だけですが、それぞれできやすい人にはいきむシチュエーションに違いがあります。内痔核になりやすい人は排便時にいきむことが多いのに対して、外痔核になりやすい人は運動中など、排便時以外でいきむことが多いです。
内痔核と外痔核の治療には手術は必要ありません。基本的には生活習慣の改善と薬の使用によって治療していくことになります。生活習慣については内痔核・外痔核ともに不摂生を避け、食事に気を付けることが重要です。薬に関しては外痔核では軟膏、内痔核では座薬を使うことをおすすめします。
痔核の治療のために医師による生活指導を受けたい方や、適切な薬を処方されたい方は、ぜひお近くの肛門科で医師の診察を受けましょう。

平田悠悟プロフィール(平田肛門科医院 副院長)
1982年 東京都生まれ。
筑波大学医学専門学群卒業。東京大学大腸肛門外科入局後、東京山手メディカルセンター大腸肛門病センターに出向し、
大腸肛門病の専門医としての豊富な臨床経験を積む。
2020年 東京大学大学院医学系研究科外科学専攻医学博士課程修了。
現在は平田肛門科医院の副院長。