おしりの医学

HOME | 痔の治療に関するコラム | おしりの医学 | おしりの医学#060「痔瘻(じろう)の原因」

Dr.Hipsが語る〜痔を知り、楽に治す方法〜

おしりの医学#060「痔瘻(じろう)の原因」

痔の中でも特に重篤な症状になりやすい痔瘻。一般的には下痢が原因と言われていますが、他の原因も考えられます。痔瘻の原因をあらかじめ知っておくことで、予防のための行動をとることが可能です。今回は痔瘻の原因についてお話ししていきます。

痔瘻の原因

痔瘻とは痔の症状の中でも特に重症化しやすい症状の1つです。肛門付近には皮膚と粘膜の境界線である歯状線が存在します。歯状線には肛門陰窩(こうもんいんか)と呼ばれるくぼみがあり、くぼみに便が入り込んでしまうと雑菌の影響で痔瘻が発症してしまうのです。
肛門陰窩に便が入り込むと、くぼみがトンネルのようになって病巣が奥に進んでいき、内肛門括約筋と外肛門括約筋の間にある連合縦走筋付近に原発巣と呼ばれる空間を作り出すことが多いです。
原発巣でさらに菌が繁殖すると、次は出口を求めてさらに病巣が奥に進み、最終的には肛門付近の皮膚に穴を開けて出てきます。痔瘻が発症した肛門陰窩のことを一次口、肛門付近の皮膚にできた穴を二次口といい、手術の際にはそれぞれの場所をしっかりと確認し、確実に切除することが重要です。
通常、肛門陰窩に便が入り込むことはありません。しかし、下痢で便が水のようになっていると、便が肛門陰窩に入ってしまう可能性があります。よって、痔瘻の原因は一般的に下痢と言われることが多いです。
しかし、実は下痢以外にも痔瘻の原因になるものがあります。それが内痔核です。内痔核が肛門陰窩の近くにあると、肛門陰窩の谷間の傾斜が急になり、肛門陰窩に菌が到達しやすくなります。結果、痔瘻になるリスクが増えると考えられているのです。

内痔核の治療が痔瘻の予防につながる

先に述べた通り、内痔核があると、痔瘻になるリスクが高まる可能性が高いです。内痔核は手術せずに治療することが可能ですが、痔瘻の場合は確実に手術が必要になるため、身体への負担が大きくなります。
よって、身体への負担が増える可能性があることを考えると、内痔核がある人は早急に治療するのがおすすめです。内痔核は切除しない限りなくなりませんが、炎症を抑えられれば痔核が小さくなり、痛みや出血といった症状もなくなります。
内核痔の炎症は生活習慣を改善できさえすれば自力で治療することが可能です。内核痔の炎症は、生活習慣の乱れによる免疫力の低下と、自律神経の乱れや暴飲暴食による排便の乱れが原因となります。
まずは夜更かしを控え、睡眠不足を解消しましょう。睡眠不足は免疫力の低下につながる上、自律神経も乱れるので、常態化すると炎症を起こす原因となります。特に頻繁な晩酌は睡眠の質を落とし、下痢の原因にもなるので、治療中は控えるのが賢明です。
また、運動不足になると自律神経の反射を妨げ、規則的な排便ができなくなります。近年はテレワークの普及などによって家から出ず、座りっぱなしで作業することも多くなっているので、運動不足になりがちです。自律神経の反射は軽い運動でも引き起こせるので、起き抜けにストレッチやウォーキングをするなどして、朝の排便を促すことをおすすめします。
暴飲暴食は腸内環境を乱すだけでなく、腸の活動が異常になって便秘や下痢の原因になるため控えましょう。適切な食事量を守り、食物繊維をしっかり摂れば、便が理想的な状態になるため、肛門への負担を減らすことが可能です。痔に良い食事については『おしりの医学#007「痔に良い食べ物・悪い食べ物」』で解説しているので、合わせてご覧ください。
一方で、胃に食べ物や飲み物を入れることで自律神経の反射を促し、排便しやすくなります。起き抜けにコップ1杯の水を飲めば、朝の運動と同じく便意を促せるので、習慣化することで無理のない排便を実現できるでしょう。

痔瘻を予防するためにも生活習慣を見直そう

一般的に、痔瘻の原因は下痢であることが多いです。しかし、大きく腫れあがった内核痔があると肛門陰窩に菌が入り込む確率が上がり、結果的に痔瘻になるリスクが高まるので注意が必要となります。
痔瘻を治療するためには手術は免れません。対して、内核痔は生活習慣の改善で治療することが可能です。自力での治療の可能なので、内核痔がある方は、治療することで痔瘻のリスクを減らしましょう。早急に内核痔を治療したいのであれば、生活習慣の改善に薬を併用するのが有効です。薬の処方を受けたいのであれば、お近くの肛門科で診察を受けることをおすすめします。

平田雅彦プロフィール(平田肛門科医院 院長)
1953年 東京都生まれ。
筑波大学医学専門学群卒業。慶應義塾大学医学部外科学教室に入局し、一般外科を研修。
社会保険中央総合病院大腸肛門病センターに入り、大腸肛門病の専門医としての豊富な臨床経験を積む。
現在、平田肛門科医院の3代目院長。