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Dr.Hipsが語る〜痔を知り、楽に治す方法〜

おしりの医学#062「痔は遺伝する?」

近年では生活習慣病としても数えられ、多くの方が発症している痔。痔の症状に悩む人の中には、「代々痔になる家系だし、痔って遺伝するのでは?」と考える方も多いでしょう。今回は痔は遺伝なのかどうかについてお話ししていきます。

痔は遺伝なのか?

結論からいうと痔が遺伝するかどうかは未だ解明されていません。病気が遺伝性のものであると証明するには以下の2つの方法があります。

  • 痔の遺伝に関する遺伝子の異常が存在する
  • 一卵性双生児を対象とした実験をする

詳しく見ていきましょう。

痔の遺伝に関する遺伝子の異常が存在する

1つ目は痔の発症に関わる遺伝子が存在する場合です。基本的に、病気の遺伝は遺伝子の欠落や延期の置換・挿入などが原因で発生します。つまり、親族内で痔を発症している人の遺伝子に同じ異常が存在すれば、痔は遺伝性の病気であるといえるということです。
しかし、現在痔の発症に関連する遺伝子の異常を見つけることはできていません。遺伝性の病気には1つの遺伝子の異常によって発生する単因子性のものと、複数の遺伝子の異常によって発症する多因子性のものがあります。
単因子性のものであれば既に発見されていておかしくないのですが、多因子性のものとなると要素が複雑に絡み合い、発見するのが困難です。結果的に現在も痔が遺伝性である根拠は発見できていません。ただし、今後の研究で痔の遺伝パターンが発見される可能性もあるため、現状では痔が遺伝性かどうかは不明ということになっています。

一卵性双生児を対象とした実験をする

一卵性双生児を対象にした対照実験でも病気が遺伝性かどうかを確認することができます。痔は生活習慣によって発症するリスクが変わる病気です。よって、遺伝子が全く同じな一卵性双生児にそれぞれ別のスタイルで生活させることで、痔が遺伝性かどうかを確かめることができます。実験方法は以下の通りです。

  • 一卵性双生児の子供を50組募集する
  • それぞれ生活スタイルが全く異なる環境で生活させる(例えば日本とアメリカなど)

上記の実験方法を見れば、現実的に実施することが難しい実験であることが分かります。事実、上記の実験は行われておりません。現代社会においては机上の空論といえるような実験方法なので、今後も実施される可能性は低いといえるでしょう。

痔の遺伝に対する当院の見解

先に述べた通り、痔が遺伝性の病気かどうかは判明しておりません。しかし、あくまで当院のインプレッションとしては、痔の遺伝はあるのではないかと考えています。厳密には痔の発症というよりは痔が発症する部位の状態が遺伝した結果、痔になりやすくなるという考えです。
元来、直腸の粘膜が弱い方は痔になりやすい傾向にあります。粘膜の弱さについては遺伝する可能性も考えられるので、家系的に痔が発症しやすいということは起こり得るのではないでしょうか。
とはいえ、実際のところ、痔は体質よりも環境で発症しやすい病気です。和式トイレを使っていきみがちだった方や、寒い地方に住んでいて血行不良になりやすい方などは、どうしても痔になりやすい傾向があります。
将来、痔が遺伝する病気であると判明したとしても、やはり痔になりにくい生活習慣や食事を行えば、痔は予防できると考えています。

平田雅彦プロフィール(平田肛門科医院 院長)
1953年 東京都生まれ。
筑波大学医学専門学群卒業。慶應義塾大学医学部外科学教室に入局し、一般外科を研修。
社会保険中央総合病院大腸肛門病センターに入り、大腸肛門病の専門医としての豊富な臨床経験を積む。
現在、平田肛門科医院の3代目院長。