Dr.Hipsが語る〜痔を知り、楽に治す方法〜
おしりの医学#097「痔の初期症状を放置すると、がんなどの重篤な病気になったりすることはありますか?」
今回もライブ配信第2回にいただいた質問についてお話しします。「痔の初期症状を放置しておくと重篤な病気につながることもあるのでしょうか」という質問をいただきました。実は痔と症状が似ている病気はいくつか存在し、中には早期に治療しないと取り返しのつかないことになるものもあります。今回は痔に似ている病気について解説します。
痔に似ている病気は意外と多い
痔の初期症状といえば、以下のようなものが挙げられます。
- 排便時の出血
- 排便時の痛み
- 脱肛
- 肛門付近や直腸の鈍痛
- 便が細くなる
実は上記のような症状は痔以外の病気でも現れることがあります。
例えば大腸がんや直腸がんになると、便が細くなり、血便が出るようになるようになります。がんは痔と違い、初期に治療を行わないと取り返しのつかないことになるので、初期症状のうちに利用を開始しなければいけません。
また、直腸の鈍痛を放っておいたら、実はベーチェット病だったということもあります。ベーチェット病は難病指定疾患の1つで、消化管に繰り返し炎症がおこる病気です。免疫疾患であり、症状がある場合は長期にわたってステロイドや免疫調節剤などを利用した治療を行っていく必要があります。以上のように、痔だと思っていたものが、重篤な病気の初期症状だったということは少なくありません。
また、痔と症状が似ている病気だけでなく、痔が原因で引き起こされる病気もあります。代表的なものとして挙げられるのが貧血です。痔が原因の出血が多すぎると、貧血になることがあります。人によっては輸血が必要なほど重篤な貧血になることもあるため、軽視できない病気です。
重篤な病気を早期に発見するためにも、肛門や直腸付近に違和感を感じたら、早めに医師の診察を受けることをおすすめします。
日本人は痔の診察を受けるのが遅い
日本人は痔になってから初診を受けるまでに7年かかると言われており、世界的に見ても診察を受けるのが遅いとされています。「痔の診察は恥ずかしい」などの心理的な障壁が原因とされていますが、前述した病気の可能性も考え、早期に診察を受けるのがおすすめです。
海外では初期症状を感じたらすぐに診察を受けることが多く、結果的に治療による体への負担も軽く済んでいます。他の病気にも言えますが、「放置していたら実は重篤な病気だった」となっては目も当てられませんので、医療機関とうまく付き合い、身体的なリスクを可能な限り減らしていくようにしましょう。
平田悠悟プロフィール(平田肛門科医院 副院長)
1982年 東京都生まれ。
筑波大学医学専門学群卒業。東京大学大腸肛門外科入局後、東京山手メディカルセンター大腸肛門病センターに出向し、
大腸肛門病の専門医としての豊富な臨床経験を積む。
2020年 東京大学大学院医学系研究科外科学専攻医学博士課程修了。
現在は平田肛門科医院の副院長。