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おしりの医学#108「便秘薬の常用は良くない?」

今回もライブ配信第3回にいただいた質問についてお話しします。「便秘薬を常用しているのですが、家族から排便を薬に頼るのは良くないと言われました。やはりそうなのでしょうか?」という質問をいただきました。そこで今回は、便秘薬の常用による影響について解説していきます。

便秘薬(下剤)に頼らず排便できるに越したことはない

質問者様のご家族の方がおっしゃる通り、結論としては便秘薬に頼りすぎるのは得策ではありません。便秘薬は、大まかに分類すると以下の3種類に分けられます。

  • 機械的下剤
  • 刺激性下剤
  • 自律神経作用薬

機械的下剤は緩下剤とも呼ばれる便秘薬です。便に水分を与えて軟便化することで、排便を促す作用があります。刺激性下剤は腸の蠕動運動を高めることで便秘の解消を促す便秘薬です。主に腸の運動性の低下によっておこる弛緩性便秘に対して使われることが多く、即効性が高いものの習慣性が高いというデメリットがあります。
自律神経作用薬は、文字通り自律神経の乱れによって便秘になっている時に利用される便秘薬です。副交感神経を刺激することで腸管運動を促進し、排便を促します。
それぞれの便秘薬を症状に合わせて利用することで、一時的に便秘の解消が可能です。ただし、便秘薬には副作用もあるため、長期にわたって使用するのはおすすめしません。
例えば、機械的下剤を長期利用すると、種類によっては高マグネシウム血症の原因になることがあります。また、刺激性下剤は習慣化すると効果を感じにくくなる他、使いすぎると大腸メラノーシスという病気の原因になります。
自律神経作用薬は腸だけでなく全身に影響することもあって、最近は使われることが少なくなってきているのが実情です。
加えて、便秘薬の長期服用は腸内環境の悪化の原因になります。腸内環境の悪化は排便に悪影響を及ぼす他、『おしりの医学#100「『認知症に効果がある食物は?』〜今日から始める生活改善~」』でも解説しているように、近年では認知症との関係性も判明しています。
よって、便秘薬を長期的に使用するのではなく、生活習慣の改善の改善によって理想的な便を作り出すことが重要です。

食べ物を工夫することで便秘の解消を目指そう

便秘の原因としては、偏った食生活と運動不足が挙げられます。特に食生活の改善については比較的容易に実施できるので、便秘に悩んでいるのであれば積極的に行っていくことをおすすめします。
腸内環境の改善に効果のある食べ物は以下のようなものです。

  • 青魚
  • 発酵食品
  • 食物繊維の多い食材
  • オリゴ糖

動物性たんぱく質は悪玉菌発生の要因となりますが、青魚は比較的悪玉菌が発生しにくいため、結果的に腸内環境の悪化を抑えることができます。また、発酵食品を日常的に摂取することで、乳酸菌をはじめとした善玉菌の増殖が促進されるため、善玉菌優位な腸内環境を作り出せます。
さらに、食物繊維やオリゴ糖は善玉菌の餌になるため、効率的に善玉菌を増やすことが可能です。以上のような食材を意識して摂取することで、腸内環境が整い、理想的な排便を期待できます。
一方で、肉類をはじめとした悪玉菌を発生させる食材や、ニンニクや唐辛子のような刺激の強い食材は、過剰に摂取しないように注意が必要です。基本的には腸内環境の改善に効果のある食材を効率的に摂取できる和食を中心とし、ジャンクフードや辛い中華料理などを食べる頻度は少なめにしていくと良いでしょう。

平田悠悟プロフィール(平田肛門科医院 副院長)
1982年 東京都生まれ。
筑波大学医学専門学群卒業。東京大学大腸肛門外科入局後、東京山手メディカルセンター大腸肛門病センターに出向し、
大腸肛門病の専門医としての豊富な臨床経験を積む。
2020年 東京大学大学院医学系研究科外科学専攻医学博士課程修了。
現在は平田肛門科医院の副院長。