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Dr.Hipsが語る〜痔を知り、楽に治す方法〜

おしりの医学#110「男性と女性、どっちが痔になりやすい?」

痔は多くの人々が経験する一般的な健康問題ですが、性別によって発生率に若干の違いがあると言われています。今回は男性と女性の痔の発生率の違いやその原因について解説します。

痔の発生率における男女差

統計的にみると、女性の方が男性よりも痔になりやすい傾向があります。当院でも男女で極端な差があるわけではありませんが、患者の比率を見ると女性が6割、男性が4割です。
女性の方が比率が多い主な要因としては、妊娠と出産が挙げられます。妊娠中はホルモンの変化や体重増加により、骨盤内の血管に圧力がかかり、痔に繋がるケースが少なくありません。また、出産時はいきんだ際の骨盤付近への負担が、痔の発生を引き起こす要因となります。
結果的に出産直後は痔の症状が出ることが多いです。しかし、出産直後は子育てなどによって痔の診察を受ける余裕がないこともあり、来院の機会を失ってしまう人も少なくありません。当院に来院する患者が、発症から受診までにかかる期間の平均は7年程度ですが、場合によっては出産直後に痔に発症し、10~20年程度我慢していた人もいました。
痔の受診が遅くなると、加齢によって筋力や血管の弾力性が低下することもあり、症状の悪化に繋がりやすくなります。「出産して二児(痔)の母」ともいうように、出産と痔は切っても切れない関係にあるので、子育てで余裕がない時でも肛門のケアをしていくことが重要です。

痔の予防や治療方法

痔の予防や治療方法については、男女で特に差はありません。基本的には生活習慣の改善や必要に応じた薬の使用などで、ほとんどの痔の症状を治療することが可能です。特に生活習慣については、以下のような部分を意識することで、痔の予防や治療に繋がります。

  • 食物繊維を摂取する
  • 横になる時間を十分に設ける
  • 座りっぱなしを避ける
  • 湯船に浸かる

まずは食物繊維を摂取することです。食物繊維を摂取することで腸内環境が改善され、便の状態が正常になります。結果的に排便時にいきむ必要が無くなるため、肛門に負担がかからず、痔の予防や改善に繋がりやすいです。
横になる時間を十分に設けることは、特に内核痔の予防や改善に繋がります。人間は4足歩行から2足歩行に進化したこともあり、重力の影響で肛門付近に血が溜まりやすくなっています。事実、4足歩行の哺乳類は内核痔になることがほぼありません。よって、睡眠時間が少なくても、横になる時間が設けられていれば症状の軽減が期待できます。
また、座りっぱなしを避けることも痔の予防や改善には重要です。長時間座りっぱなしの状態は肛門付近に自重がかかるので、肛門への負担が大きくなります。特にトイレの便座に座る時間が多いと、一般的な椅子に座っている時以上に肛門に負担がかかるため、おすすめできません。
長時間の座り仕事などをする場合は、1時間に1回は立ち上がり、軽く体を動かすようにしましょう。トイレについても、可能であれば3分以内、長くても5分以内に済ませるのが理想です。
最後に、湯船につかることも痔の予防や改善に効果的です。入浴して身体が温まると、筋肉が一時的に弛緩するため、排便がスムーズになります。結果的に肛門をへの負担を減らすことができるので、排便時にいきむことが多い時は、入浴時間を増やしてみましょう。
上記に加え、治療時は座薬などによる治療を行うことで、手術をせずに痔の症状を改善することが可能です。

平田悠悟プロフィール(平田肛門科医院 副院長)
1982年 東京都生まれ。
筑波大学医学専門学群卒業。東京大学大腸肛門外科入局後、東京山手メディカルセンター大腸肛門病センターに出向し、
大腸肛門病の専門医としての豊富な臨床経験を積む。
2020年 東京大学大学院医学系研究科外科学専攻医学博士課程修了。
現在は平田肛門科医院の副院長。