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おしりの医学#118「症状別治療のプロセス②〜裂肛(切れ痔)」

裂肛は排便時に強い痛みを引き起こし、日常生活に大きな影響を与えます。裂肛の治療には手術が必要と思っている方も多いですが、実際には保存的療法で治療できることが多いです。本記事では裂肛の症状や原因、実際に行う治療方法について詳しく説明します。

内痔核(いぼ痔)の症状と原因

裂肛は切れ痔とも呼ばれ、文字通り肛門の裂傷を指します。硬い便が肛門を通過する際や慢性的な下痢、肛門周辺の筋肉の過度な緊張などで発生することが多いです。一度症状が出ると、排便時に鋭い痛みを引き起こす他、肛門からの出血や肛門周囲の痒み、炎症などを引き起こします。
また、裂肛が何度もできると、肛門ポリープができたり、傷口が硬くなるなどの症状が起こり、肛門が狭くなる肛門狭窄に発展する可能性があります。肛門狭窄になると、排便時に裂肛ができやすくなり、裂肛が頻発するという悪循環に陥ります。よって、症状が悪化する前に治療を行うことが重要です。

痔の症状が改善されない場合は手術を検討

基本的に、裂肛の治療は薬物療法と生活習慣の改善というような保存的療法によって行います。まず、外用薬によって裂肛を治療します。その上で、並行して食物繊維の多い食べ物を摂取し、水分を積極的に摂ることで、便を柔らかくし、裂肛の再発を防ぎます。
また、湯船に浸かって筋肉を弛緩させることも有効な治療法です。入浴によって筋肉の緊張が和らげば、裂肛ができる要因を減らせます。基本的には3ヶ月程度かけて治療を行い、一度症状が改善しているかを診察します。
3ヶ月程度で症状が改善されない場合は、筋肉を弛緩させるような軟膏の使用などを検討します。以上のような治療でも改善が見られない場合は手術を検討することになりますが、多くの場合は手術が必要になる前に治療することが可能です。事実、当院での手術率は18.2%となっており、約8割の患者さんは手術せずに治療が完了しています。

内核痔は保存的療法で十分に治療できる

裂肛は適切な治療を行えば、保存的療法で改善可能な症状です。早期の薬物治療と生活習慣の改善を行えば、手術をすることなく治療を行うことができます。裂肛が重症化すると、手術が必要と言われることも多いです。しかし、手術は身体への負担が大きく、場合によっては術後の生活に支障が出る恐れがあります。裂肛の治療を行う際には、すぐに手術を行わず、他の専門医に保存的療法で改善できないか相談することをおすすめします。

平田悠悟プロフィール(平田肛門科医院 副院長)
1982年 東京都生まれ。
筑波大学医学専門学群卒業。東京大学大腸肛門外科入局後、東京山手メディカルセンター大腸肛門病センターに出向し、
大腸肛門病の専門医としての豊富な臨床経験を積む。
2020年 東京大学大学院医学系研究科外科学専攻医学博士課程修了。
現在は平田肛門科医院の副院長。