Dr.Hipsが語る〜痔を知り、楽に治す方法〜
おしりの医学#119「症状別治療のプロセス③〜痔瘻(じろう)」
痔は多くの人が一度は経験する可能性がある病気です。しかし、その中でも痔瘻は感染症としての性質が強く、他の症状に比べて治療が複雑になります。本記事では、痔瘻の症状や原因、治療の流れについて解説します。
痔瘻の症状と原因
痔には内痔核、外痔核、痔瘻などいくつかの種類があります。中でも痔瘻は、重症化しやすい症状となっており、生活習慣が原因で発症しやすい他の症状と異なり、感染症の一種となっています。
痔瘻は直腸と肛門の間に存在する歯状線という皮膚と粘膜の境目にある肛門陰窩(こうもんいんか)という小さなくぼみに細菌が入り、化膿してしまう病気です。初期症状は肛門周囲の腫れや痛みで、肛門周囲膿瘍という別の病名で診断されます。
肛門周囲膿瘍の場合は局所麻酔をして患部を切開し、膿を出す軽い手術を行います。ただし、膿を出す手術はあくまで応急処置であり、症状が改善せずに重症化することが多いです。
重症化すると患部が潰瘍となり、瘻管という穴に発展していきます。瘻管は雑菌を外に排出する際の生理的な防衛反応の一種で、肛門陰窩から肛門周囲の皮膚に向かって伸びていき、肛門周囲に穴が開きます。瘻管ができる確率は50%程度で、肛門周囲膿瘍の治療で済むことも多いです。
痔瘻の手術が必要なケース
痔瘻は瘻管が形成されている場合、確実に手術が必要です。ただし、初診の際には炎症によって瘻管が形成しているかを確認することが難しいため、前述のように肛門周囲膿瘍として診断し、膿を出す手術をして経過観察を行います。
1ヶ月程度経過した後に再診し、瘻管を確認できた場合、再度手術を行うことになります。しかし、肛門周囲膿瘍の手術を行った段階で治療が終了すると勘違いする患者さんも少なくありません。
基本的に、専門医が肛門周囲膿瘍の手術を行った場合は、経過観察の後に再診をし、瘻管が形成されている場合は再度手術が必要になることを説明しているのですが、肛門周囲膿瘍の手術で痛みがなくなったことで、もう利用の必要がないと判断してしまう患者さんが多いのです。
実際には手術が2回必要になることも多いので、痔瘻になった際は医師の話をよく聞き、しっかりと再診を受けるようにしましょう。
平田悠悟プロフィール(平田肛門科医院 副院長)
1982年 東京都生まれ。
筑波大学医学専門学群卒業。東京大学大腸肛門外科入局後、東京山手メディカルセンター大腸肛門病センターに出向し、
大腸肛門病の専門医としての豊富な臨床経験を積む。
2020年 東京大学大学院医学系研究科外科学専攻医学博士課程修了。
現在は平田肛門科医院の副院長。