痔瘻[じろう](あな痔)
痔瘻の症状と4つのタイプ
痔瘻は、お尻がはれて激しく痛み、うみが出てくるという症状がくり返し起こります。痔瘻には、原発巣である肛門腺からうみが進む経路によって4つのタイプがありますが、もっとも多いのは、瘻管が内肛門括約筋と外肛門括約筋の間にあるⅡ型です。
肛門からのうみやお尻の激しい痛み
肛門周囲膿瘍は、お尻がはれて激しい痛みがあります。痛みはズキンズキンという拍動性であることが多く、ふれると痛みがさらに増します。全身の発熱をともなうことも少なくありません。ただ、膿瘍が深いところにある場合は、はれや痛みがわかりにくく、発見が遅れることもあります。やがて皮膚が破れてうみが出てきます。うみが排出されると、楽になります。
痔瘻になると、排便にかかわらず肛門や痔瘻の出口から絶えずうみや分泌物が出るため、下着をよごすようになります。痛みが強くない肛門周囲膿瘍もありますし、肛門周囲膿瘍をへないで痔瘻になるケースもあるので、下着のよごれは痔瘻発見の重要な手がかりとなります。
うみの刺激により皮膚にびらんが起こり、かゆみを感じることもあります。進行すると、出口から便が漏れることもあります。また、何本もの瘻管ができると、肛門の機能が障害されて、排便困難を感じたり、便が細かくなることもあります。
また、持続する違和感のような鈍い痛みがつづく場合もあります。
痔瘻の4つのタイプとその特徴
Ⅰ型痔瘻
瘻管が肛門上皮、または皮下にあり、肛門括約筋をつらぬいていない痔瘻です。皮下痔瘻、または粘膜下痔瘻とも呼ばれます。裂肛の裂け目に便が詰まることにより起こる場合が多く、肛門腺が原発巣でないこともあります。発生頻度は高くありません。
Ⅱ型痔瘻
筋間痔瘻とも呼ばれ、痔瘻の70~80%を占める一般的なものです。内肛門括約筋と外肛門括約筋の間を瘻管が走る痔瘻で、瘻管の深さによって、歯状線より下にできるものを「低位筋間痔瘻」、上にできるものを「高位筋間痔瘻」といいます。
また、瘻管が1本のものを「単純型」、瘻管が2本以上あるものを「複雑型」といいます。
Ⅲ型痔瘻
瘻管が肛門括約筋の奥にある肛門挙筋より下方に発生し、坐骨直腸窩痔瘻ともよばれます。痔瘻の約20%を占め、ほとんど男性に起こります。肛門の背側が原発口となり、そこから便が入り込むと内肛門括約筋と外肛門括約筋、そして坐骨直腸筋の間(コートネイのスペース)が広いために、深くて大きな原発巣ができやすくなります。この原発巣から外肛門括約筋をつらぬいて、左右に瘻管ができます。瘻管が片側のものと両側のものがあります。
Ⅳ型痔瘻
骨盤直腸窩痔瘻とも呼ばれ、発生はまれです。肛門挙筋をつらぬいて進行します。
こんな症状があるときは痔瘻の疑いが!
- 肛門からうみが出てくる
こんな症状があるときは肛門周囲膿瘍の疑いが!
- 排便に関係なくお尻がはれて痛み、38度以上の熱が出る。
応急手当
痔瘻はお尻の炎症が原因ですから、これをしずめるためには患部を冷やします。 うつぶせに寝て、お尻の上にタオルを置き、その上に氷のうやアイスノンなどをのせてくるみ、熱を持った部位を冷やします。
また、肛門のまわりがうみでベトベトになっているはずですから、排便後には入浴か座浴を行い、お尻をいつも清潔にしておくことも大切です。このときに石けんや市販の消毒綿などは使わずに、ぬるま湯でゆっくりと洗うようにしてください。