痔は切らずに治す

痔の原因

日本人に3人に1人は「痔主」

痔は、世界的にポピュラーな病気です。日本人は、痔の症状がひどくなってから病院にかけ込む人が多いようですが、外国人の患者さんはすぐに受診する傾向にあるため、症状が軽くすみます。

痔は日本でも世界でもポピュラーな病気

「3人寄れば、痔主が1人」といわれるように、痔は日本人にとって非常に身近な病気の一つです。

1988(昭和63)年に、ある製薬メーカーが成人男女に対面アンケート調査をしたところ、約36%の人が「自分は痔の気がある」と答えました。日本人の成人の3人に1人が痔に悩んでいることになります。

さらに、自分が痔であることに気がついていない人は、実に多いのです。ドイツの解剖学者が成人の遺体を解剖したところ、70%の人が痔核を持っていたといいます。これは、生前に痔を自覚していなかった人も含めて、正確な痔主の数を明らかにした驚くべきデータといえます。

また、アメリカのヘンリー・フォード病院のハース博士は、外来患者のほとんどすべてに肛門部の診察を行い、86%に痔核を認めた、と1982年に報告しています。

このように、痔とは、世界的にポピュラーな病気なのです。

痔の治療は早期の受診がカギをにぎる

痔の発症率は、日本人と外国人とでは、さほど変わりはありません。しかし、痔にかかる率は同じでも、症状の程度は大きく違っています。日本人の場合は、概して、がまんできないほど症状がひどくなってから病院へかけ込む人が多いようです。

平田病院(平田肛門科病院)が1000人の患者さんに行ったアンケート調査では、自分が痔と自覚してから受診するまでの期間が平均して7年間となっています。

受診が遅れる理由として、

①診察を受けるのが恥ずかしい
②痔で死ぬこともないから医者に行くのがめんどうだ
③医者に行くとすぐに手術をされる
④痔の手術は死ぬほど痛いそうだ
⑤痔の手術は何週間も入院しなくてはならない
⑥痔は手術をしても再発する

といった回答が寄せられており、お尻を見せる恥ずかしさもさることながら、「手術をされるのではないか」という不安感も大きいようです。

これに対して、外国人の患者さんは「痔かな」と思ったらすぐに受診する傾向にあり、そのために、比較的症状の軽い人が多いのです。

痔の種類にもよりますが、早期に治療を始めれば、ほとんどの痔は手術しないで治すことができます。先進各国での痔核の手術率を見ると、ドイツで7%、イギリスで5%、アメリカで4%という調査結果があるように、日本にくらべて手術率は低いようです。

平田病院でも、現在、痔核の手術が必要な患者さんの割合は約11%ですが、もっと早期に受診する人がふえれば、手術率は1けた台まで減ると思われます。できるだけ早く専門医にみてもらうこと、これが痔を治すいちばんの早道といえるでしょう。

痔の治療と「真の健康と幸福」

最近の医療では、患者さんを治療する医師が、その患者さんが治療のあとに充実した人生を送れるかどうか、つまりクオリティー・オブ・ライフ(Quality of Life:生活の質)を考えながら治療を行うことと、医師が治療をする前に患者さんに、これから行う治療がどのようなものなのか、そしてその治療をすることによってどのように病状がよくなるのかをよく説明し、患者さんがそれを納得してから治療を行うインフォームド・コンセント(Informed Consent:説明と同意)が常識となっています。

平田病院では、痔の治療をした後の患者さんの健康と生活を十分に考慮して、治療を行っています。そして病気を治し、真の健康と幸福を得るために、ハーバード大学心身医療研究所のハーバード・ベンソン博士が提唱する、①薬学的処置、②外科手術とその他の処置、③セルフケアの三本柱が必要と考えています。

「薬学的処置」と「外科手術とその他の処置」は、医師が行う治療ですが、それにもまして大切なのがセルフケアです。

よく、「病気を治すのは、本人の自然治療力で、医師と薬はその手伝いしかできない」といわれます。痔の治療においても同じで、患者さんが自分の健康管理をきちんと行い、痔になりにくい生活環境をととのえること、すなわちセルフケアをすることが痔を治すポイントになります。

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