痔の種類と症状

痔核[じかく](いぼ痔)

手術が必要な痔は少ない②

内痔核ではどのくらいの割合で手術が行われるのか

内痔核の治療の基本は、内痔核を生活習慣病と考えて患者さんに生活指導を行い、日常生活でセルフケアをしてもらうことです。しかし、日常生活に支障があり、手術をしなければ十分なQOL(生活の質)が得られないケースがあります。

内痔核がⅢ度以上のときは手術を適応するというのが世界的治療の指針ですが、イギリスでは手術率が5~10%(J.Nicholls)と比較的低い数字を示しています。

日本の内痔核の手術率が世界的に見て高いか、あるいは低いかを調べる必要があります。

臨床研究などの科学的なデータにもとづき、患者さんにとって最良の治療法を選択しなければならないからです。 このように、根拠に基づいた医療をEBM(Evidence-Based Medicine)といいます。

2002(平成14)年4月から2003年4月までに平田病院で受診した内痔核の患者さんで、初診から1年間にわたって治療の経過を観察することが可能だった128人(男性41人〔32%〕・平均年齢48.7歳。女性87人〔68%〕・平均年齢52.4歳)を選び、次の方法で症例を分析してみました(ほかの医療機関から手術が目的で紹介された患者さんは除外)。(図参照)

〈方法1〉
初診時に緊急に手術の必要がない患者さんには、内痔核の状態をよく説明して、まず3ヵ月間は生活指導と保存治療を行いました。

3ヵ月後に、患者さんと症状がどれくらい改善されたか、日常生活で不都合がなかったかを決めました。そして、その後は2~3ヵ月に1回、受診してもらい、初診から1年間の症状の経過を観察しました。

〈方法2〉
初診から1年後に、ふたたび患者さんに治療についての満足度と、今後、どのような治療を希望するかを質問しました。それらの結果を整理して「1年の間に手術をした症例」「1年後に手術を希望した症例」を「手術群」とし、「手術をしなかった症状」「1年たっても手術を希望しなかった症例」を「非手術群」にしました。

また、「1年間でICG併用半導体レーザー療法を行ったか、あるいは希望した症例」を「レーザー療法群」として、「手術群」「非手術群」「レーザー療法群」の比率を検討しました。

その結果、次のことがわかりました。

・128人のうち、1年間、経過観察をして手術をした症例は9例で7%にすぎない。レーザー療法をふくめても17例で13%である。
・初診時の症状から検討すると、患者さんは内痔核の症状である排便時の脱出だけでは受診せず、嵌頓や裂肛、外痔核を併発して急性炎症の症状があらわれてから、はじめて受診する傾向がある。
・以上の経過を検討すると、初診時に症状のつらさから患者さんが手術を希望しても、病状をよく説明して3ヵ月間は生活指導と保存療法を行うことが重要であることがわかる。
・実際、3ヵ月後には腫脹、疼通、出血はほとんど改善し、排便時の脱出まで改善される例が多い。
以上のことから、次の結論が得られました。

・初診時に、患者さんが腫脹、疼通、出血を訴えて手術を希望しても、3ヵ月間は生活指導と保存療法を行うと手術率は7%になり、レーザー療法を含めても13%にすぎない。
・したがって、初診時にただちに手術することを決めず、3ヵ月後にあらためて手術の必要性を検討すべきです。

内痔核の症状改善度

手術しても治らないものがあることは覚えておいてほしい

日本を含めて、世界の肛門科の専門病院であれば、痔核や痔瘻などの肛門の病院に関しては、基本的に完全に治すことができます。

ただし、手術をしても治らないものがあります。老化現象(図参照)と体質です。肛門を20代の状態に戻したり、病気になりにくい肛門にすることはできません。肛門の病気のうち、手術で解消できるものは病気の症状だけで、老化現象や体質が原因による症状は手術しても残ります。

また、痔は生活習慣病ですから、過去5年から10年にわたってみなさんの生活の中でつくられてきた病気です。つまり、痔は「生活習慣がもたらした負債」といえます。手術をすれば、この過去の負債は完全にゼロにすることができますが、未来の病気の予防にはなりません。

たとえば、胃がんの手術をして、胃にできたがん細胞を取り去っても、そのあとに肺がんになることがあります。虫歯の治療で虫歯を治したからといって、一生、はをみがかなくてもよい、ということにはなりません。

このことと同じように、一度、痔の手術をして、完全に肛門を元に戻しても、その後、肛門に炎症を起こすような生活習慣をつづけていれば、ふたたび新しい痔を作るようになるのです。

このように、同じ過ちをくり返して痔を再発させないためには、月並みですが、健康な生活を送れるように、生活習慣を改善することが重要です。

痔の手術のすべてが、日帰り手術でできるわけではない

痔は、肛門の病気の総称です。さまざまな症状があります。また、痔ができた場所によっても、治療法が違ってきます。

したがって、手術をする場合でも、日帰りでできる手術もあれば、ある程度長期に入院しなければできない手術もあります。

基本的には、直腸まで手術をしなければならないケースは、入院が必要です。

たとえば、内痔核は病巣の上端が直腸に達しているので、内痔核を完全に除去する場合は、入院していただきます。痔瘻も、複雑なものや、直腸におよんでいるものは入院が必要です。

日帰り手術を受ける場合は、手術の前に

①日帰り手術のリスクはどれくらいありますか?
②帰宅してから、痛みや出血はどの程度ありますか?
③手術後の容態が急変したときには、入院の施設や、ただちに入院できる病院がありますか?

ということを確認しておくとよいでしょう。

平田病院では、手術のために必要な入院期間の割合は、次のようになっています。

①日帰りまたは2日入院=約10%
②1週間~10日間の入院=約65%
③2週間の入院=約25%

また、平田病院では、24時体制でベッドを用意して、医師と看護師が緊急の事態にそなえています。