痔は切らずに治す

痔のセルフケア

便秘下痢対策②平田式排便法

ここでご紹介する平田式ラクラク排便法は、起立反射、胃・結腸反射などの神経反射をスムーズにするために、リラクゼーション法とイメージ法を組み合わせ、臨床心理士の高田みぎわ先生といっしょに開発したものです。

いきんで出すのではなく、自然におりてくるのを待つ

この体操のポイントは、まず、排便をできるだけリラックスした状態で行えるようにすること。そして、「いきんで便を出す」行為ではなく、生きている体全体をじっくり感じながら、「体のいとなみ」として心地よく排便する習慣に変えることです。

この体操は、こまかいやり方よりも、自分が心に描くイメージを体で覚えることが大切です。

①朝は、ゆとりを持って目覚める

まず、朝は、時間のゆとりを持って目覚めることから始めます。朝の時間は貴重ですが、健康にとってはとても大切な排便といういとなみのために、ゆったり時間を確保してください。

②体全体を目覚めさせる

目が覚めたら、まず、足の裏から手の先、頭のてっぺんまで、体の存在を感じながら、体をしだいに目覚めさせます。この間、ゆっくりと腹式呼吸をしながら、両方の手足の先、足首、手首を回したり、こすり合わせます。寝たままでも、起き上がった状態で行ってもかまいません。「私の体さん、おはよう!」と呼びかけます。

③起き上がってリラックス

次に、起き上がってリラクゼーションを始めます。床にすわるか椅子に腰かけますが、慣れたら、立ったままでもかまいません。

足は肩幅に軽く開き、腕や首の力はできるだけ抜きます。体の感覚に集中するために、目は閉じるか半眼にします。もし、リラクゼーション用に水の流れなどを録音したものがあれば、BGMとして流すと効果が増します。

ゆっくりと深呼吸をしながら、自分の呼吸に合わせて、両足首を4~5回ほど回して少し休みます(立って行う場合は片足ずつ)。そして、左右の足の感覚の差を調べてみます。このとき、片足が軽いとか、少ししびれているなど、自分の感覚がとぎすまされてくるのがわかるでしょう。

体に緊張感を感じたら全身をブラブラとゆすることで力が抜けてきます。両手首を回したり、ブラブラさせて、腕、ひじ、肩の力が抜けてくると、腕が重くぶらさがっている感覚が味わえます。

④体をさする

ひざから下をゆっくりさすります。次に、太ももの前後をさすります。このようにさすっていくと、足全体が単なる歩く道具ではなく、一つの存在としていきいきと自分のイメージの中にあらわれてくるようになります。

次に、立った状態で、お尻全体をいたわるように、まるくさすります。

さらにおなかや胸、背中なども、体自身が心地よく感じるようにさすりましょう。

⑤ほぐれた体いっぱいに深呼吸

体がほぐれて存在感を味わえるようになったら、体のすみずみまで空気をいきわたらせ、体を空気で満たすように呼吸をしてみましょう。

目はなるべく閉じて、鼻からおなかの底へ息をいっぱい入れ、少し止めてから、フーッと自然に吐き出します。このときに「足の裏から息を吸い上げ、頭のてっぺんから空へ向かって吐き出すようなイメージ」で行います。はじめはうまくいかなくても、だんだん自分なりのイメージで、深い呼吸ができるようになってきます。

①〜⑤までは心身のリラックス法なので、ストレス解消にも有効です。

⑥冷たい水で内臓を目覚めさせる

まず、冷たい水をコップ2杯、ゆっくりと飲みます。このとき、水が口、のど、食道、胃まで流れて入るのを感じながら飲むことがポイントです。

さらに、その水が腸にまでしみわたっていくイメージを描きます。そして、⑤の深い呼吸法をつづけながら、冷たい水の刺激が、腸に伝わるように、おなかを右回りに「腸が動いていく」イメージを描きながらさすります。

こうして、起立反射、胃・結腸反射、リラックスなどの組み合わせで腸が動き出し、便意がわき上がってきます。

⑦トイレでイメージ

軽い便意が起こっても、トイレにかけ込んであわてていきまないことです。ゆったりと便座に腰かけ、目は閉じるか半眼にして、ゆったりと呼吸してリラクゼーションを心がけます。気ばって便を出そうとせずに、便が直腸をおりてくるのを感じとりながら、便意が強くなるようにイメージしましょう。

このイメージ法を用いれば、便意がいったんなくなっても、再び戻ってきます。そして、便意が強くなったら、はじめて軽くいきみ、肛門を開くようにします。こうすれば、長時間いきみ、過剰な腹圧をかけて肛門の周囲をうっ血させることなく、楽に排便できるのです。便秘でかたくなった便を排出するときや、下剤を用いて排便する場合でも、原理はまったく同じです。

⑧快便感を体で覚える

どうしても便を出したい、出なかったらどうしようなどと思うと、ますます便意は逃げていきます。気持ちよく排便できたときの感覚を覚えておきましょう。

気持ちをリラックスさせ、心をからっぽにして、自分の体の中に流れている自然のリズムに耳を傾けてみましょう。体の奥には、便を出そうとするリズムが必ずあります。その心地よいリズムを乱すことなく、助けるような気持ちで、便を体の外へ送り出してやるのです。じゃまものを追い出すという気持ちではなく、排便の後思わず「ありがとう。ご苦労様」と思えるようになったら、しめたものです。

【COLUMN】
肛門体操で痔の予防

肛門には、内・外肛門括約筋という肛門を締める筋肉があります。この外肛門括約筋は自分の意思で締めることができる筋肉ですから、体操をすれば鍛えることができます。同時に、血流をよくしてうっ血を解消し、痔の予防にもなります。病院では、括約筋の締まりの弱い人や締める感覚がわからない人のために、肛門にセンサーを挿入して括約筋を締め、締めた圧力を自分の目で確かめる治療法(バイオ・フィードバック療法)を行っています。

自宅で行う場合、慣れないうちは入浴時が便利です。まず10~15回肛門を締める練習をして締める感覚がわかってきたら、人さし指に石けんをつけ、ゆっくり肛門を挿入して肛門を締める運動をします。慣れたら立ったままでもできますし、腹式呼吸をしながらのエクササイズとして行う人もいます。

気軽に行える肛門体操ですが、肛門に炎症がある場合は避け、排便後はシャワートイレなどで肛門を清潔にしてから行いましょう。